論説・コラム

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シリーズ・国のかたちを考える/サステナビリティ日本フォーラム代表理事・後藤敏彦氏  [2018年6月6日1面]

後藤氏

 ◇ESGへの取り組みが企業価値向上
 ESG(環境・社会・企業統治)投資が欧州で5割、米国は2割を超え、主流になりつつある。日本でも世界最大の年金基金である「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)」が15年9月に国連の責任投資原則に署名し、ESG投資への関心が一気に高まった。
 機関投資家の行動規範として、企業との中長期の対話がうたわれている。投資による持続的な成長を企業に求めるにしても、多くが3カ月に一度の四半期決算において、投資行動の中長期対話が行われていない。企業が策定する3~5年程度の中期経営計画では先行きの対話に耐えられない。2030年や2050年など将来を見据えたビジョンや戦略が必要だ。
 経営者はそんなに先まで見通せないと言うが、今年の新入社員が仮に22歳で入社したら2050年を迎える32年後は54歳。その時定年が70歳になっていたら、企業を担う真っ盛りの時だ。現役の社員に対し、経営者が責任を持てないのは情けない。存続できるように変化に対応しなければならない。先は見えないが、読める先もある。人口はこのくらいになるとか、二酸化炭素(CO2)が出せなくなるのは既に分かっている。
 ESG投資先の選定では、ESG的に良くないところを外す「ネガティブスクリーニング」という手法が主流だ。極論すると情報公開のない項目は0点。国際的には日本企業の環境報告は評価が高い。建設会社は現場で廃棄物の分別やZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)など、環境に配慮した取り組みを行っている。そうした情報をきちんと公開し、高く評価してもらえれば投資を呼び込める。
 一方、社会報告は働き方改革や女性採用などの情報開示には積極的だが、特に人権と腐敗防止の開示が少ない。経営体制も機構図を載せるだけでは駄目だ。どう機能するかを説明することが重要だ。社外取締役も何のために入れるか説明できていない。
 これから建設会社が海外で事業を伸ばしていくとなると、さらにESGが問われるようになる。バリューチェーンの中で社会的責任を果たしているかが課題だ。例えばアメリカで事業活動を展開する企業が、アフリカで賄賂を行ったとしたらアメリカで罰せられる。よい活動を公表するのはもちろん、悪いことを「していない」ということも開示しないと、選んでもらえない時代になっている。
 中長期のビジョンや戦略を作り公表し、多くのステークホルダーと一緒に盛り上げていくことが企業のブランドと価値向上につながる。その絶好のチャンスだ。先行きが不確実だからこそ作るべきだ。そして定期的に見直していけばいい。
 (ごとう・としひこ)日本サステナブル投資フォーラム最高顧問、グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン理事、環境経営学会長などを兼務。2013年から環境省の環境情報開示基盤整備事業「ESG対話プラットフォーム」で座長を務める。東大法学部卒。

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