BIMの課題と可能性・15/樋口一希/二つの領域にまたがる新しい職能・2

2014年5月8日 トップニュース

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 グラフィソフトのサイトで公開されたBIM LABO監修のLOD(Level Of Development/Detail)情報が注目を集めている。概念、コンセプトとして語られてきたLODが実際のBIMソフト「ArchiCAD」に即して紹介されているからだ。


 □BIMの活用には2次元CADでの設計手法から3次元モデル構築に適したLOD策定への移行が必須□

 建築工程の最上流から施工を経て竣工後の施設管理まで援用できるBIM。新しいシステムの普及期にはよく起こるが、BIMでも、概念が先行し、「できる」が喧伝されている。日々の業務で多忙を極めている実務領域にBIMはすんなりと普及していない。BIM LABOは、ミッション「(LODを)創る」を通して、そのギャップを埋めようとしている。

 企画、基本、実施設計と分類されている建築の設計工程は、手描きの設計製図=2次元CADシステムの援用を前提としている。設計者は、建物の3次元モデルを構築するBIMソフト導入に際しても、それら既存の手法を用いて混乱している。

 LODでは、3次元モデル=設計のレベルまたはモデルデータの詳細度を数値化し、定量的に指標化する。100~500番台の数値が用いられ、具体的にはLOD200(基本設計モデル)、LOD300(実施設計・確認申請モデル)、LOD400(施工モデル)などと設定する。LODを設定することで、設計者は、BIMソフトで3次元モデルをどのレベルまで構築するのかを明確にできる。


 □自社の業務内容に即したLODの策定でより具体的になる設計でのフロントローディング効果□

 BIM LABOが公開している「要素ごとのLOD」では、建物を構成する各部材ごとにLODのレベルが詳細に設定されている。

 外壁のLOD100は「全体を固まりとして表現、もしくはタイプやマテリアルは識別できない壁要素/サイズや位置は決定ではない」と設定されており、数値が増えるごとに、詳細度は上がり、属性情報は増加していく。

 LOD300では「壁にあく窓、ドア、大型の設備開口は基本寸法でモデル化・非グラフィック要素として壁のタイプ/マテリアル情報を持つ」、LOD400では「含むべきモデリング要素/スタッドと上下枠・断熱材など」と設定されている。

 自社の業務内容に即したLODを作成すれば設計者の混乱は解消できる。BIM導入・活用とLODは不可分の関係にある。


 □LOD+BIMモデルの作成料の基準を策定・発注者に明示、今後のBIM運用の指針ともなる革新的な試み□

 設計事務所としても機能しているBIM LABOは、実際の受注案件でもLODを積極的に活用している。LODによって、業務量をより正確に把握することで、コンペティターに対する価格競争力も高められるし、発注者とも適正な「価格提示」に基づき交渉しやすくなる

 BIM LABOでは、発注者に対して、BIMソフトでの3次元モデルの構築メリットを説明すると共に、LOD+BIMモデルの作成料の基準を策定し、発注者に明示するようにした。これらの実績を基に、BIM LABOでは、建築設計事務所や建設会社の設計部などに向けてBIMモデルの作成、コンサルティング・サービスを提供している。

 このように、LODの策定=適正な価格設定が、設計者と発注者に受け入れられるようになれば、BIMの普及は加速化するに違いない。

 次回は、BIM LABOの更なるミッション「育てる・開発する」の実際について報告する。

 〈アーキネット・ジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)