BIMの課題と可能性・22/樋口一希/鉄骨BIMで状況をブレークスルー・1

2014年6月26日 トップニュース

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 大手建設業、設計事務所などを中心に、BIMの課題と可能性を探ってきたが、BIM運用の広がりはサブコン、設備機器メーカーなどを巻き込み、更なる進展を見せている。鉄骨BIMの現況を報告することから連載の第3クールをスタートする。


□最新の鉄骨BIMはどこまで進化したのか 片山ストラテックのFacebookページで体感□

 BIM関連の情報収集でインターネットを探索していた昨年の暮、衛星写真、地形画像などを組み合わせて「地球上の特定の場所」を3次元表示するGoogle Earth上に、鉄骨の建方が表示されていた。Google Earthをインストールしたパソコンで指示に従い操作すると図の画面となり、表示中のピースのクリックでマーク、サイズなどの確認ができた。鉄骨構造物の3次元モデルを構築したのは、片山ストラテックの鉄骨BIMソフト「KAPシステム(Katayama Application Package)」だった。

 ウェブ・アプリケーションで、鉄骨構造物の3次元モデルから生成される2次元図面も瞬時に確認できる。指定のサイトにアクセスし、BIMメニューから例えば伏図を選択する。作図したい伏図「4FL」をクリックすると、目的の伏図が表示される。※[片山ストラテック Facebook]で検索すると体感可能。


□2次元図面の頻繁な変更に対応するため、3次元モデルからの図面作成を着想□

 鉄骨工事でも情報伝達の手段は従来から2次元図面であり、繰り返し、頻繁に発生する変更へ対応するための図面修正はコスト増の大きな原因となっていた。初期段階(フロントローディングの言葉もなかったが)で3次元モデルを構築し、そこから2次元図面を生成すれば、変更も迅速かつ正確に可能なのではないか。片山ストラテックは、鉄骨ファブリケーターでもある自らの業務効率化のために鉄骨BIMソフト「KAPシステム」の開発に着手し、システムを洗練させる中で市場供給を始めた。

 既に広く知られているが、鉄骨ファブリケーターの一部では設計段階で作成されたデータに基づきNC加工を行うものもある。鉄骨BIMによる3次元モデルの構築と親和性が高いと考えられるファブリケーター周辺で何が起こっているのか。ここでも3次元モデルと2次元図面の悩ましい相関・相反関係がある。


□3次元モデル=>2次元図面作成の優位性 鉄骨BIMの実利・メリットを広く情報発信□

 鉄骨BIMソフト「KAPシステム」を運用するファブリケーターの多くは使用目的が2次元の図面作成で、そのために3次元モデルを構築しており、特段、「BIM運用」も意識していない。更に、驚くべきことにNCに数値情報を入力する際も、2次元図面から「穴径の寸法を確認して」人手で行っている。せっかくの3次元モデルを有効利用するべく、現況をブレークスルーできないか。前述のGoogle Earth+ウェブ・アプリケーション対応などを通して片山ストラテックは、鉄骨BIMの普及のために挑戦を続けている。


□顕在化している鉄骨工事を巡る問題点と課題 鉄骨BIMで状況をブレークスルーする□

 鉄骨BIM以前に、困難は他にもある。長く続いた建築不況の中でファブリケーターの多くは要員のリストラを行い、図面作成のプロを育ててこなかった。そのため現状では鉄骨工事の図面作成は専門の図面作成業者への外注が主流となっている。ここでも人手不足は深刻で、3次元モデル構築+2次元図面作成が可能となる鉄骨BIM運用への期待は高まっている。

 次回以降は、工程の上流に位置し、鉄骨BIMソフトのメリットに着目しているゼネコンなどの動向とも相まって、「KAPシステム」がこれらの課題を解決しつつある現況を報告する。

 〈アーキネット・ジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)