建築工程のさまざまな局面でBIMモデル=3次元データを他のシステムとの連携において有効利用する試みが現実のものとなりつつある。「建築とコンピュータ」の黎明期から建築系のソフトベンダーとして活躍している構造システム・グループの一員である建築ピボットを訪ね、同社のソフトウエアとBIMとの連携について調査した。
□建築系ソフトベンダーとして2016年までのBIM対応へのロードマップを公開□
同グループは、日影・天空率・斜線・日射量計算「LAB-SS」、一貫構造計算「BUS-5」、省エネルギー計算「SAVE-建築」、建築設計・製図CAD「DRA-CAD」などを市場供給している。それら各種ソフトウエアとBIMとの連携における基本コンセプトが「情報プラットフォームの構築」=図〈1〉=だ。
この情報プラットフォームを介して他社BIMソフトや外部システムと連携し、より広範囲に及ぶデータ援用を可能にするべく計画を進めている。それら計画の詳細はロードマップとして公開している。
2013年には、DRA-CAD12、LAB-SS、SAVE-建築においてBIMソフトからのIFC(※)インポート機能を追加・拡張し、設計初期段階での建物モデルの有効利用を実現した。
2014年には、DRA-CAD13、SAVE-建築 Ver.3でのIFCインポート機能をさらに拡張すると共に、BUS-5にST-Bridge(※)エクスポート・インポート機能を追加していく予定だ。
今後は、構造計算BIMソフト、最大熱負荷計算ソフトのリリース、施設台帳管理、中長期修繕計画とBIMとの連携を進める計画を明らかにしている。
□課題も持ちつつ運用精度も高まるIFCを用いてBIMモデル=3次元データを徹底利用□
建築設計に特化した2次元CADとして長い歴史をもつDRA-CADでは、DRA-CAD12からBIMとの連携を行う「Model Assist」(モデルアシスト)機能を搭載した。BIMモデルからIFC形式のデータをインポートする際に、建物を構成する柱や梁などの要素を確認しながら、BIMの3次元モデルから目的に応じた3次元形状を取り込み、平面図、立面図をDRA-CAD側で作成できる=図〈2〉。
LAB-SSでは、IFC形式のデータをインポートする際に、日影・天空率計算に必要な壁・スラブ・柱・梁などの部材だけを選択して建物データとして読み込むと共に、定義されている方位や緯度経度情報をそのまま利用できる。
BUS-5では、2014年5月からST-Bridge形式ファイルが出力できるようになり、福井コンピュータアーキテクト「GLOOBE」、ソフトウェアセンター「SIRCAD」、コミュニケーションシステム「TP-PLANNER」などで構造計算データを基に、3次元モデルを再構築する。
BIMによる3次元データの再利用が連携ソフト側でのデータ再入力の手間を省き、入力ミスもなくすなど、いかにメリットが大きいか図示例で明確に理解できる。
次回は、省エネルギー計算「SAVE-建築 Ver.3」におけるBIM連携の詳細を報告する。
※IFC=Industry Foundation Classesの略。BIMの国際標準フォーマットISO16739:2013。建物を構成する全てのオブジェクト(例えばドア、窓、壁などのような要素)のシステム的な表現方法の仕様をIFCと呼ぶ。
※ST-Bridge=日本国内の建築構造分野での情報交換のための標準フォーマット。
(参考・IAI日本のホームページより)
〈アーキネット・ジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)