BIMの課題と可能性・71/樋口一希/鹿島のGlobal BIM Ver.2

2015年6月25日 トップニュース

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 6月2日から4日まで東京・台場のホテル日航東京でGRAPHISOFT社のASIA-PACIFIC Key Client Conferenceが開催され、内外の建設会社、設計事務所などからBIMの最新状況に関する発表があった。「鹿島のGlobal BIM」の次なる展開について矢島和美氏(建築管理本部建築技術部担当部長、BIM責任者・生産性向上)の講演から抜粋し、緊急報告する。


 □BIM導入の投資が難しい協力事務所へのライセンス貸与でパワーアップしたGlobal BIM Ver.2□


 「Global BIM」は、BIMソフト「ArchiCAD」(グラフィソフトジャパン社製)+クラウドサーバーをベースに構築されたプラットフォームで、海外を含む企業間でBIMモデルの共有・運用・管理が可能だ。公表されたのは4月から運用開始の「Global BIM Ver.2」で、協力会社にBIMソフトの使用ライセンスを貸与する画期的な仕様などが追加された。

 鹿島では施工BIMモデルをベースに、協力事務所と協働して施工図を作成するが、協力事務所のBIMソフトの導入割合は約10%であった。協力会社は大半が小規模組織で高額なBIMソフト導入は強制できない。プロジェクト単位でのみ使用でき、サーバーからBIMモデルのダウンロードは不可との条件下、機密保持契約を締結した上でライセンスが貸与される。

 大手建設会社による施工図事務所の囲い込み戦略との一面はあるが、さらなるBIMソフト普及を促すためには、早期にBIMソフトを使う技術者の絶対数を増やす以外ないという業界の今後に向けた問題提起でもある。


 □パラメトリック機能で仮設資材や重機の配置を施工現場ごとに最適化するシステムを開発□


 施工現場でのBIM運用をさらに強化、高度化するため韓国のDoalltech(グラフィソフト・コリア)と共同開発したのが「BIMによる施工計画システム」と「BIM進捗管理システム」だ。

 施工現場では、工程ごとに順次、仮設資材や重機などの配置計画を検討するため、進捗に合わせて施工BIMモデルを更新する必要がある。時間的猶予は少なく、独自技術が凝縮されているからこそ、初期(基本)モデル構築のように外部の協力会社には任せられない。「BIMによる施工計画システム」が威力を発揮する。

 モデル化された山留め、構台、足場、クレーンなどの種別(タイプ)を選択し、名称(サイズ)、関連情報、配置、レイヤーなどの変数を入力すると、パラメトリックに変更される。

 それらを施工BIMモデルに配置するだけで仮設・施工計画の迅速化と精度向上が図られる。メリット大なのは、余剰となった現場要員を他現場に振り向けられることで、人手不足と増大する工事量への柔軟な対応も可能になる。

 「BIM進捗管理システム」はコミュニケーション・ツールの最新版。従来、連絡事項などのコメントは別ファイルに転記し、やりとりしていた。新システムでは、オブジェクト上に関連する連絡事項などのコメントをポップアップ表示させ、ウェブ上で一覧表示もできる。ネットワークでBIM運用が可能なチームワーク機能と合わせて効果を発揮する。


 □BIM標準を司る組織「buildingSMART」から注目されるGlobalBIMVer.2の今後の展開に期待□


 6月4日には、米国の建築設計事務所HOK(Hellmuth,Obata and Kassabaum)のCEOで、「IFC」の推奨団体「building SMART」での活動で知られるパトリック・マクレアミー(Patrick MacLeamy)氏が講演し、設計段階でのBIMに引き続き、施工段階でのBAM(Building Assembly Model)、建物・施設の運用維持管理段階でのBOOM(Building Operation Optimization Model)という注目すべき概念を提示した。

 同氏からは10月20、21の両日、フロリダ州Disney Yacht & Beach Clubで開催されるBuilding SMART internationalで「Global BIMVer.2」に関する講演依頼が矢島和美氏に寄せられている。

 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)