BIMの課題と可能性・75/樋口一希/設計・施工部門間のデジタル連携を深化させるフジタの試み・1

2015年7月23日 トップニュース

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 「建築とコンピュータ」の領域において、早くから先駆的な試みを行っていたフジタ。それらのDNAを受け継ぎ、設計BIMモデルと施工BIMモデルの連携精度を最適化して建設会社としての優位性を徹底追求するべく挑戦を続けている。明らかとなったBIM運用の効果と相関する課題を通してフジタの「今」を報告する。


 □09年のBuild Live Tokyoへの参加を契機に有志による草の根的BIM導入からスタート□


 BIMがメディアに登場することも少なかった09年、将来のIT技術動向に関心を持った開発部門(技術センター)、設計部門(建設本部設計エンジニアリングセンター)の有志による草の根的な導入からフジタのBIMはスタートした。同年には一般社団法人IAI日本が主催した48時間限定の建築設計コンペ「Build Live Tokyo 2009 II」にTeam48として参加、環境設計賞を受賞している。

 その後は自社の設計施工案件において設計部門でのBIM適用を繰り返し、BIM連携のノウハウを蓄積しながら、施工段階へBIMを適用する試行を繰り返していった。

 設計施工を柱とする大手建設業においては2D CAD図面(データ)の運用段階から設計と施工部門間のデジタル連携をいかに深化させるかは大きな課題だった。2000年頃に、両部門間を架橋する生産設計部で続けられた業務のデジタル連携での知見は、BIM導入を行う際の手がかりとなり、現在、再び重要な意味を持ち始めている。


 □BIMソフトによる3次元モデルから「2次元図面ができない」という課題の解決に注力□


 コンペティションでの提案力強化、建築主への見える化においてBIMの運用効果が大きいのは既に共通認識となった。依然として課題となっているのは、混在する2次元図面(データ)とBIMによる3次元モデルとの相関性を認識し、いかにして活用するかだ。そのような現況下、設計ツールが2次元から3次元へと切り替わる時期に建築教育を受けた若手設計者の発言の中に解決すべき課題が見えてくる。

 学生時代、図学や製図法を学ぶ際に「手描き」は経験したが、設計演習はBIMソフトでの3次元モデリングが主体。入社後、実施設計図、竣工図などを見て、実務では「ここまで図面を描く」のかと驚いた世代だ。設計部門においてBIMモデルからの2次元図面化の試行を始めた約3年前、BIMソフトによる3次元モデルからでは図面にならない課題に直面していた。そのため図面生成能力に優れると評価が高く、日本版BIMを謳うBIMソフト「GLOOBE」(福井コンピュータアーキテクト製)を用いて3次元モデルから2次元図面(データ)を生成する検証を開始した。


 □設計ニーズに応えるべく出力設定機能など2次元図面生成に特化したユニークな機能装備□


 BIMソフト「GLOOBE」では「上端」「フカシ」「巾木」などの(日本的な)建築用語が使われ、それらを踏襲した図面表現・標記を実現している。編集者の視点では、実施設計図面のサンプルを見ても2次元CADによる出力と違わない。3次元モデルから2次元図面(データ)を生成する際の、さらなる設計者の要求=残された課題はどこにあるのか。

 「GLOOBE」では、3次元部材(オブジェクト)に対して図面出力時に必要となるテキスト情報は別途、付加できる。組織内で共有する「線種」など図面出力時の仕様は、3次元部材(オブジェクト)とは切り離して出力設定機能で標準化できるため、個々の3次元モデルには依存しない。そのように優れた図面生成能力を持つにも関わらず、特記仕様書が典型的な事例だが、当然、3次元モデルに付属しない情報は出力しない。現状ではシンプルな建物であっても3割程度の加筆作業は避けられない。

 それらは主に工程間での承認行為、行政対応などとの関わりで2次元図面が必須という建設業の業務プロセス自体の課題だ。フジタでは、2次元図面(データ)とBIMによる3次元モデルとの相関性の精度向上を目指してベンダーの開発者も交え、さらなる改良に向けた協働を続けている。

 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)