BIMの課題と可能性・120/樋口一希/オーク設備工業のデジタル運用・2

2016年7月14日 トップニュース

文字サイズ

 オーク設備工業での設備BIM=建築設備専用3次元CAD「Rebro2016(レブロ)」(NYKシステムズ)の運用実態を再考するとともに、設備BIMの目指すべき「次の一手」を論考する。


 □コスト負担を含めて自社責任で3次元モデルを作成しても明らかとなるBIM運用メリット□


 オーク表参道での設備BIM運用を経て、大林組とのBIM協働は概ね定常化したが、他社案件では、多くの場合、建築(意匠)・構造側から提供されるデータが2次元図面(データ)で、BIMのデジタル連携には至ってはいない。そのため現状では、「Rebro2016」で2次元図面(データ)=躯体図をトレース、高さ情報を付与して3次元躯体データ(独自の3次元モデル=『形態情報:Modeling』)を作成している。

 その際に、最も重視すべきは、コスト負担も含め、自社責任で「Rebro2016」上に3次元モデルを構築しても、従来手法からのパラダイム・シフトを予感させられるようなメリットが多々ある点だ。


 □2次元図面の作成効率は従来と同等+可能となる精緻な取り合い検討と積算の前倒し効果□


 行政対応や業界内の慣習などから、現状では、2次元図面による捺印・承認が必須だ。「Rebro2016」は、空調・衛生・電気設備を統合した3次元モデルから平面図や断面図、詳細図、衛生図面、空調図面、スリーブ図などの各種図面を生成する。各種図面の作成効率については、従来手法と同等との定量的評価を行っている。

 各物件への施工支援業務では、躯体との詳細かつ精緻な「取り合い検討」が求められるため、設備BIMによる3次元モデルの見える化効果は絶大だ。捺印・承認は不可だが、すでに実質的な3次元協議・承認も行っている。

 積算見積もりソフト「みつもりくん」(コンプケア製)との連携も効果が期待できる。2次元図面(データ)を基に積算見積もりソフト側で再入力していた作業を、図面+数量を包含する3次元モデル渡しとすることで、積算ソフト側での拾い出し作業の大幅な時間短縮と精度向上が可能となり、加えて受注判断の前倒しによる営業機会増大にも結びつく。


 □「創るため」から「管理するため」へと設備BIMの技術的な射程距離を伸延する意識変革□


 従来、設備の3次元モデルには「創るため」に最低限必要な『属性情報:I=Information』を付与していたが、設備BIMの技術的な射程距離を「管理するため」にまで伸延するためには、どのような『属性情報:I=Information』をどのタイミングで付与すべきかが検討され始めた。背景には、本稿第113~114回の建物維持管理ツール「BIMobile」(大林組)などの実稼働がある。

 本稿第110~112回「BIMと連動する積算システム」において意匠設計者は、『形態情報:Modeling』とともに、積算にまつわる『属性情報:I=Information』も入力しているとの認識が必要だと論考したが、今後、設備BIMとの連携に際しても同様の意識付けが求められる。


 □点群データと設備BIMの連携などに積極的に挑戦し改修設計・工事へとビジネス機会拡張□


 バージョンアップされた「Rebro2016」では、点群処理ソフト「Infipoints」(エリジオン製)との専用ファイル(*.RebroLinkFromInfiPoints)によるダイレクト連携を実現している。

 3次元スキャナーで対象物件を点群データとして「Infipoints」に読み込み、点群データを面形状とした上で設備機器をモデリング+配管経路を生成する。続けてダイレクト連携で躯体と設備機器の面+画像に加え、配管などを配置した3次元モデルに自動変換し、用途・材料・保温材厚などを設定する。

 これらの新たな挑戦は、「創るため」のBIMモデルを「管理するため」のBIMモデルへと伸延するノウハウ構築と合わせて、今後、ニーズが顕在化する設備の改修計画・工事への援用に向けて、設備業界全体のビジネスチャンスを拡げるに違いない。

 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)