BIMの課題と可能性・125/樋口一希/すけるTONリンクでの鉄骨詳細図作成・下

2016年9月1日 トップニュース

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 鉄骨の詳細部材(仕口、継ぎ手、ガセットプレート、ボルトなど)の3次元モデル化によって、鉄骨詳細図の作成+鉄骨ファブリケータとの連携強化を実現する「すけるTONによるRevit鉄骨ディテール連携システム」(カルテック)。デジタル情報の優れた流通性、可用性を最大限に活用している。


 □鉄骨ファブリケータとのデジタル連携によってミッシングリンクで発生するリスクを回避□


 鉄骨ファブリケータとのデジタル連携を概説する。BIMソフト「Revit」のアドインツールとして稼動する「すけるTONリンク(仮称)」を介して「Revit」から鉄骨積算システム「すけるTON」に受け渡し、「すけるTON」側で自動生成した詳細部材は「Revit」の3次元モデルとして「すけるTON」内にも保存される。

 そのため「すけるTON」を使用する鉄骨ファブリケータでは、「Revit」の建物(鉄骨)本体のモデルと詳細部材を合算した「すけるTON」データを受け取れる。これによって鉄骨ファブリケータ側での2次元図面(データ)=鉄骨詳細図を基にした3次元モデルの再入力が不要となり、ミッシングリンクによる人為的ミスが回避できる。


 □経験値=係数を主要部材に掛け合わせて算出していた詳細部材の集計精度を飛躍的に向上□


 鉄骨詳細図作成の付加的効果として実現した高精度の鉄骨数量算出を概説する。従来は、一貫構造計算プログラムで生成された鉄骨の主要部材を数量算出し、経験値などからなる係数を掛け合わせ、詳細部材を概算していた。

 本システムでは、「Revit」で鉄骨の詳細部材を3次元モデル化するため、「Revit」上で稼動する集計システムを用いて、3次元モデルに付随するオブジェクト情報から数量算出が可能となる。3次元モデルのある構成要素(M:Modeling)を鉄骨詳細図として切り出し、他の構成要素(I:Information)を集計して数量算出へと援用する。BIM(Building Information Modeling)の真骨頂である。


 □「すけるTON」のライセンス所有を前提に希望者にテスターとして試用版の提供も計画中□


 BIMソフト「Revit2016」とのデジタル連携に加えて、Direct Shapeと呼ばれる新機能搭載の「Revit2017」への対応も実現した。従来、「Revit」ではファミリと呼ばれる部材定義機能によって、3次元モデルをパラメトリックに可変生成できるが、Direct Shapeでは、ファミリを用いずにモデル化が可能となる。

 Direct Shapeの詳細は継続的に探索するとして、現状で明らかとなった革新的な優位性を列記する。ファミリでは、「Revit」のバージョンに対応するリソースの整備が求められたが、Direct Shapeでは対象の3次元モデルを直接扱うため、リソース整備が不要だ。また、個々のモデルごとに特定の形状定義を行い、可変部分を持たないため、変換処理速度も向上し、「Revit」本体のレスポンスも改善する。

 鉄骨の詳細部材は比較的標準化が進んでいることから、「すけるTON」では、それら標準仕様をマスターファイルとしてデータベース化し、ユーザーが目的に応じて選択する機能が用意されている。そのため、業界内での共通ツールとして広く利用してもらうべく、カルテックでは17年を目処に市場供給を計画している。

 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)