BIMの課題と可能性・131/樋口一希/BIMデータを使用した建築確認申請・2

2016年10月20日 トップニュース

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 注目を集めている「BIMデータを使用した建築確認申請手続きによる国内初の確認済証を交付」。独立系の建築設計事務所の生き残り策としてBIMソフトを導入したフリーダムアーキテクツデザインがBIMモデルでの確認申請実現に至る端緒から報告する。


 □建築設計事務所でのBIMの実務運用が本格化する中で申請機関との接近遭遇が発端となる□


 建築主=市場は、建築の素人であり、専門家同士の符牒のような平立断面図やスタティック(静的)なCGパースなどでは理解されない。建築主との合意形成を『質量』ともに改善するBIMのプレゼンテーション能力に着目し、フリーダムアーキテクツは、14年秋にBIMソフト「Revit」を導入した。設計者の約30%のBIMソフトを一気呵成に導入した成果は定量的にも顕在化した。

 16年2月、大塚商会主宰のセミナーで、フリーダムアーキテクツは、『量=建築主との打ち合わせ時間』はほぼ半減し、『質=建築主からの信頼』の高まりで成約率も向上するなど、BIMソフト導入が建築設計事務所の経営面での体質強化に貢献したと明らかにした。講演後、建築確認申請機関の住宅性能評価センターから連絡を受け、面談機会を設けたのがBIMモデルでの確認申請実現の発端となった。


 □関係者間での利害が一致した確認申請の大多数を占める4号建築物へのBIMモデルの援用□


 面談後、約6カ月の短期間で、国内初のスキームが実現した背景には、フリーダムアーキテクツ、住宅性能評価センター、大塚商会、オートデスクの4社間での、優れて現実的な目標設定と戦略的なシステム構築がある。

 国土交通省が直近で公開したホームページによると、※16年1~6月の建築確認申請総数は約27万5000件、その内の4号建築物は約20万3200件、指定確認検査機関での4号建築物は約17万2300件あることから、民間の確認機関でも、申請件数の大多数を占める4号建築物の審査をBIMモデル援用によって効率化できればメリット大だ。

 フリーダムアーキテクツが手掛ける年間約400棟の戸建て住宅のほとんども木造在来工法による4号建築物だ。設計者の約30%のBIMソフト稼働状況からBIMモデル化できる年間約100棟/400棟について確認機関から確認済証が受領できれば業務フローは劇的に改善できる。

 確認機関でのBIMモデルからの図面出力用テンプレートを開発した大塚商会は、BIMコンサルティング能力の高さを広く喧伝できるし、オートデスクは、手薄だった建築設計事務所でのシェア拡大が期待できる。4社はウィン・ウィンの関係をさらに発展させるべくコラボレーションを継続している。

 ※出典=建築確認申請件数(計画変更を除く)の推移:2007年4月~16年6月(国土交通省)


 □電子署名「F-2 Web」適用+法的改正は伴わないなど現実的な実現可能性を徹底的に追求□


 フリーダムアーキテクツは、BIMモデルを確認機関の電子署名「F-2 Web」で送信する。確認機関ではBIMモデルから6枚の図面=案内図・配置図・求積図・平面図・立面図・断面図をテンプレート出力して審査、問題点を指摘し、フリーダムアーキテクツでは(図面ではなく)BIMモデルを修正する。確認機関では図面不整合のチェックが不要となり、フリーダムアーキテクツでは図面出力は不要となった。

 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)