BIMの課題と可能性・147/樋口一希/小規模組織のBIM運用・4

2017年2月7日 トップニュース

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 小規模組織のBIM運用の第2弾として地場の工務店として活動している原忠(福岡県田川市)の現況を報告する。


 □「木造BIM」運用を通して地場の工務店でも進む「モデルが主で図面が従」との意識変化□


 大手ゼネコンや組織事務所でのBIM運用が脚光を浴びる中で、確認申請件数の約7割を超える木造住宅へのBIM適用も進んでいる。BIMソフト「Vectorworks」のベンダーであるエーアンドエーも登録商標「木造BIM」を掲げて普及活動を展開している。

 16年11月22日に開催された「Vectorworks2017新製品発表会」において工務店の立場でBIM運用の現況を語った原忠代表取締役の原口広氏。ここでも「3次元モデルが主で2次元図面は従」との業務革新が起こっている。BIM導入で地場の工務店としての現業がどのように変貌したか検証する。


 □図面のデジタル化を経て3次元モデルから最終成果物としての図面生成に至る業務の革新□


 手描きの製図からVectorworksの前身「MiniCAD」へと移行する中で最初に起こった革新は、情報のアナログからデジタルへの転換だった。「MiniCAD」は先進的な3次元CAD機能をもっていたが、手描きの製図手法を電子的な製図板の上に移す2次元CAD主体の運用で、平立断・展開図・建具表などを従前通りに描いていた。「手描きの方が早いのでは」との思いを払拭(ふっしょく)し、編集機能などデジタル情報の優位性を実感するまで時間は要さなかったが、この段階では、作業としての製図の効率化追求の域は出ていなかった。

 BIMソフト「Vectorworks」への改訂後も、当初は、3次元モデルから最終成果物としての2次元図面生成が困難であったため、3次元モデルから生成した2次元図面を汎用(はんよう)CAD機能で加筆修正していた。

 本格的なBIM運用への挑戦のきっかけは、13年に島根で開催された建築士会全国大会でのBIM事例発表であった。3次元モデルから加筆修正しないで済む精度の高い2次元図面をいかにして生成するのかの試行錯誤が始まった。


 □「訂正はモデルで行い、図面では行わない」を実現した3次元と2次元のハイブリッド化□


 最終成果物としての図面を生成するために着手したのは、3次元モデルと2次元図面が相互還流するBIMソフトの特性の解明であり、3次元モデルと2次元図面の相関性の検証であった。

 例えば、ある精度と設定条件下で断面ビューポート機能によって断面図を生成し、出力すると、最終成果物としては不過分な線が現出することがある。本来、3次元モデル本体のみでは図面出力に関する属性を持たず、リソースマネージャのハッチング設定にみられるように、追加設定を要するからだ。

 3次元モデルと各種設定の最適な相関性を見いだした結果、断面ビューポート機能を用いて縮尺1/100の断面図を1/50の詳細図にまで転換できるようになった。誤差数%で訳注などの追加訂正はあるにしろ、「訂正は全てモデルで行い、図面では一切行わない」(原口広氏)を可能にした。ここでも作業としての製図はすでに終わり、「モデルが主で図面は従」=3次元と2次元のハイブリッド化というパラダイムシフトを達成した。

 次回は、設計施工を担う工務店としてBIMのI=Informationを活用して、設計から施工へと3次元モデルを援用するメリットを検証する。

 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週火・木曜日掲載)