BIMの課題と可能性・171/樋口一希/鹿島がBIM専業の新会社設立

2017年5月9日 トップニュース

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 鹿島は、BIM(Building Information Modeling)の一層の普及促進と高度化を図るため、4月5日、BIM専業の新会社「グローバルBIM」を設立した。建築管理本部本部次長兼BIM推進室長兼務で副社長に就任した矢島和美氏へのインタビューから新会社が目指す「BIMの先へ」について展望する。


 □我が国初の「BIMサービスプロバイダー」としての今後の活動に各方面から注目が集まる□


 鹿島では、09年以降、建設業における最も重要な生産拠点である施工現場へのBIMの集中導入を図ってきた。13年には、クラウドサービスに基づく先進的なBIMプラットフォーム「Global BIM」を他に先駆けて構築し、社内外のプロジェクト関係者間でのデータ共有を通して、海外を含むBIM導入現場における飛躍的な生産性と品質の向上を実現した。

 新会社「グローバルBIM」では、ここに至る実績と培っていたノウハウをベースに、建設会社にとどまらず、建築設計事務所や建築主など広く社会全般を対象にBIMモデリング、BIMコンサルティングなどのサービスを提供する。合わせて社内運用しているBIM施工計画アドオンソフト、BIMプロジェクト管理アドオンソフトなどの社外販売も行い、関連書籍の発行も計画している。

 従来、BIMのフロントローディング効果を示す指標として、米国の大手建築設計事務所HOKの名誉会長であり、bSI会長も務めるパトリック・マクレミー(Patrick MacLeamy)氏の「マクレアミー(MacLeamy)曲線」が知られている。

 我が国の建設業の業態に即し、現在に至るBIM運用実績を定量的に分析した上で、矢島氏が提唱しているのが「Yajima Curve」だ。「Yajima Curve」が新会社設立の現実的かつ理論的な根拠となったといえる。


 □「Global BIM」から「Open BIM」に至るまで「BIMの先へ」と向けてIPDを実態的に発動□


 建築物の多くは一品生産で、生産拠点の施工現場もテンポラリーであるなど、製造業などと比較して業態はユニークだ。それら「業としての建設」の立ち位置を踏まえた上で、Connected CarからConnected Building+Internet of ThingsからInternet of Buildingsなどへと続く社会全般の情報化と並走し、変化への迅速な対応が求められている。

 デジタルはやすやすと国境も組織の壁も超え、異なる分野・領域間を架橋する。施工BIM運用で獲得した経験やノウハウを工程上流の設計へと伸延し、さらに竣工後、日々、稼動する建築物の動的なFMへと還流する。「Global BIM」とともに先駆的に掲げられた「Open BIM」を通して「BIMの先へ」に向けた新たな挑戦が始まる。

 「建設会社として施工BIMを徹底活用することによって建築物を構成する情報を見える化、経済価値化できるため、IPD(Integrated Project Delivery)(※)を実態的に発動する環境が整った。社内外に向けて組織を開き、経団連の「ソサエティ5.0」やbSJ建築委員会委員長としてパブリックドメインの活動も続けていく。全ては『BIMの先へ』と先鋭的に状況を進めるためだ」(矢島和美氏:グローバルBIM副社長)

 ※IPD=米国の建設業界から生まれた新たなビジネスモデル。建築家、エンジニア、請負業者、施主など、建築プロジェクトにかかわるチームが初期の段階から協力し、最適な建物を建てるという共有目的の下、最も有効な決定を共同で下すことを可能にする協業形態。

 《株式会社グローバルBIM》

 設立日=2017年4月5日

 社長:中野隆、取締役副社長:矢島和美

 所在地=東京都港区赤坂6-5-11

 資本金=4000万円

 主な事業内容=BIMモデリング、BIMコンサルティング、BIMソフト開発・販売、IPD推進など

 URL=http://www.global-bim.com/

 (出典4月13日発行プレスリリース)

 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週火・木曜日掲載)