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時流自流/日本建築学会会長・古谷誠章氏/市民に信頼される建築学再興を  [2017年5月31日2面]

古谷誠章氏

 ◇研究と実践の相乗効果に期待
 日本建築学会の第55代会長に就任した。「建築界が一丸となり、地域と世界への視点を併せ持つ、信頼される日本の建築学の再興へ」を基本方針に掲げた。研究者、教育者(学術)と実務者(実践)が交流を深める環境を整備。日本の建築学の個性と価値を高め、地域社会、国際社会に貢献する専門家職能の確立を目指す。
 --学会をどうけん引する。
 「これまで設計の実務を手掛けながら、大学で教育・研究活動も行ってきた。実務と教育・研究には互いを高め合う相乗効果があると感じているが、学会の全国大会に参加し、会場に実務に携わる建築家の姿が少なく、大変に寂しかった記憶がある。建築に関わる人々の集まりである学会には研究する側と実践する側の機能があっていい」
 「学会には意匠、構造、設備、歴史、生産など多様な分野を専門とする人がいる。建築物はこれらの人々が総動員され、再統合されて結実する。今の学会は、各分野がそれぞれを極める方向にあるが、さまざまな知見を統合してデザインを追求するという考え方も必要だ。工学と意匠を基礎に、両者の相乗効果の上に成り立つ日本の建築学の個性と価値を高め、社会にアピールすることが大事だ」
 --具体策は。
 「学会内には村上周三元会長が構想し、斎藤公男元会長が創設した『建築デザイン発表会』があり、今は意匠や構造の関係者が一緒に発表している。デザイナーとエンジニアが融合する萌芽ともいえるもので、大事にしたい。内部の専門家同士だけでなく、建築を使う側の市民を含めて意見を交わし、相乗効果を発揮する場を提供するのが学会の役割の一つだろう」
 「もう一つは建築と土木がシームレスにつながっていないといけない。東日本大震災が発生し、被災地の危機的状況を乗り越えるために建築と土木両分野のエンジニアらが垣根を越えて協力する必要性は両者で認識されている。都市づくりで土木の関係者と連携できる場をつくれるよう働き掛けていきたい」
 --グローバル化への対応は。
 「学生や若手設計者で力のある人が、成長著しいアジアで活躍する環境を整えることは、将来の国内市場を考えた時には大事なことだ。建築資格の国際的な相互承認に向けて、日本はJABEE(日本技術者教育認定機構)が、各国の建築教育認定団体の国際的協定『キャンベラ協定』への正式加盟を進めている。国際承認が取れていなければ海外で仕事ができなくなる。若い人材を海外に送り出せるよう支援したい」
 「学生時代に海外を経験できる環境づくりにも力を入れたい。海外の仕事には耐震技術など日本の進んだ技術を提供するという側面もあるが、プリミティブな環境の中で現地にある材料でものをつくるという点で日本が学べることも多い。交流から学ぶ姿勢は大事だ。地域に根差した建築活動を行うことにもつながる」
 --他の建築団体との連携は。
 「建築界に対する市民の信頼を獲得したり、建築を巡ってさまざまな問題が起きたりした時には、建築関係の団体が連携、共同して行動を起こす必要がある。各団体の特徴と個性を尊重しながら、必要な時には垣根を乗り越えることが重要だ。多くの団体が一緒にもの申せば、国や社会も取り上げる。もう一歩踏み込んだ連携をしたいと思っている」。
 (ふるや・のぶあき)78年早大理工学部建築学科卒、80年同大学院博士前期課程修了。94年早大助教授、97年から教授。94年に八木佐千子氏とナスカを設立。高知県香美市のやなせたかし記念館・アンパンマンミュージアムと詩とメルヘン絵本館などを手掛けてきた。日本建築学会賞の作品賞や作品選奨、日本建築家協会(JIA)の日本建築大賞、BCS賞、日本芸術院賞など受賞多数。東京都出身、62歳。

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