BIMのその先を目指して・2/樋口一希/VRアーキテクツシステム

2017年7月13日 トップニュース

文字サイズ

 比較的、安価に運用でき、効果も見えやすいことなどからVR(Virtual Reality)技術が建築の現業に急速に浸透しつつある。フリーダムアーキテクツデザイン(東京都中央区)がスター・マイカ(東京都港区)の定額制リノベーションプラン「じぶんReno」向けに6月から提供を開始した「VRアーキテクツシステム」を概説する。


 □設計実務や顧客プレゼンテーションに自社内運用でメリット大のVR技術を集約して公開□


 独立系の建築設計事務所であるフリーダムアーキテクツデザインは、前稿「BIMの課題と可能性」の第131~133、177回で報告したように、BIMデータでの建築確認申請手続きの実用化など、BIMソフト「REVIT」を積極的に運用している。BIMの3次元建物モデルを基に、設計実務や顧客プレゼンテーションに用いていたVR技術を「VRアーキテクツシステム」として集約し公開した。VRアーキテクツシステムは、BIMソフト「REVIT」、クラウドサービス「Autodesk LIVE」、3Dゲームエンジン「Autodesk Stingray」、VRヘッドマウントディスプレイ「HTC Vive」から構成される。

 設計段階でのBIMソフトによる3次元建物モデルをVRヘッドマウントディスプレイ「HTC Vive」と連携させることで、完成後の室内を「自由に動き回れる体験」が可能となり、2次元図面やディスプレイ内の3次元パースでは分かりにくい奥行き感や天井高、家具のレイアウトまでを具体的に確認できる。


 □室内を歩き回るフィジカルな体験を通してVR技術では「リアルな生活感」も実感できる□


 スター・マイカは、中古マンション市場を中心にリノベーションマンションの供給を行っている。「じぶんReno」は、オリジナルなマンション在庫を強みとした未公開物件紹介サービス、定額制リノベーションプラン、VR体験サービス、コンシェルジュサービスから構成され、物件探しから入居・引き渡しまでをトータルでサポートする。

 フリーダムアーキテクツデザインでは、VRアーキテクツシステム採用の「VR体験スタジオ」の開設からモデルプランのVRコンテンツ作成など、技術供与全般を支援した。リノベーション実施後のVR空間の実際は、スター・マイカ本社内の「VR体験スタジオ」で体験できる。

 リノベーションをキーコンセプトに競争が激化している中古マンション市場。競合他社との差別化にVR技術は効果大だ。

 VR技術では、顧客自身が室内を歩き回るという「原寸感覚」のフィジカルな体験を通して「リアルな生活感」ともいえる感覚も実感できる。極論すれば、建築という専門性が、初めて一挙に、一般の市場に開かれた瞬間に立ち会っているともいえよう。

 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週火・木曜日掲載)