BIMのその先を目指して・7/樋口一希/東急コミュニティーの3D修繕履歴管理・1

2017年8月1日 トップニュース

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 東急コミュニティー(東京都世田谷区)がソフトウエア開発会社のサイトセンシング(東京都千代田区)と共同で開発した既築マンションを3次元モデル化し、長期にわたって管理する3D・修繕履歴管理システム「TC3ARD(ティーシーサード)」について報告する。


 □3次元スキャナーによる点群データに代わって写真の2次元画像から3次元モデルを構築□


 「TC3ARD」では、既築マンションの各部位ごとに写真撮影し、2次元画像をつなぎ合わせて全体の3次元モデルを構築する方法を採用している。各部位ごとの面積や使用部材を3次元モデルにひも付けすることで、大規模改修工事や長期修繕計画の各部位ごとの数量積算も実施できる。

 設計施工でのBIMモデルに紐付けしたI=Informationが「管理する」=FM(Facility management:ファシリティ・マネジメント)へ援用できるのが共通認識となる中で、既築建物物の管理に3次元建物モデルを援用する手法の研究開発も進んでいる。

 主流は3次元スキャナーによる点群データの援用だ。3次元スキャナーでは、物体(建物)表面を自動的に計測し、多数の点の3次元座標=点群データ化する。そのため点群データのままではBIMソフトなどに適合せず、専用処理ソフトで面形式に変換する必要がある。加えてデータ容量も膨大となるなど課題もある中、2次元画像を用いて、60戸規模のマンションであれば、約2時間程度で撮影、約7日で作成し、3次元モデル化できる「TC3ARD」は注目に値する。


 □建物の基本情報・修繕履歴を時系列で管理し長期に渡ってライフサイクル(コスト)把握□


 東急コミュニティーにおいても、管理するマンションの約30%が築30年以上経過した物件となる状況下、事業継続性、経済合理性を損なうことなく、建物の老朽化対策をいかに行うのかは喫緊の課題である。

 「TC3ARD」を用いれば、特に、部分的、段階的に改修する場合でも、改修履歴などの情報を長期にわたり、継続的に管理でき、合わせて精度の高いデジタル情報で建物を記録することで、工事ごとに実施していた積算業務の効率化と工数削減に寄与する。工事内容や工程もビジュアル化でわかりやすくなり、居住者の理解促進、合意形成の迅速化にも繋がる。

 図は、屋上防水工事を選択した際の画面だ。タイムラインコントローラを操作することで、当該工事の時系列での推移が色分けによって視認できるとともに、右上画面にあるように、その段階での工事代金までがリアルタイムで把握できる。3次元モデルによる「見える化」が建築の専門家にとっても優れて有効である証左となる事例だ。

 (出典:東急コミュニティー・ニュースリリース)

 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週火・木曜日掲載)