BIMのその先を目指して・18/樋口一希/東急建設の体験型安全衛生教育システム

2017年9月12日 トップニュース

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 ICTをはじめとした先端技術を活用して建設現場における課題解決を目指している東急建設では、災害事故を疑似体験することで安全意識を喚起して事故撲滅につなげるべくVR(Virtual Reality=仮想現実)ゲームのテクノロジーを活用した体験型安全衛生教育システムを開発した。

 □VR空間内で災害事故の発生過程を疑似体験することにより災害防止に大きく寄与する□

 連載『BIMの課題と可能性』第170回「建築分野のAR/VRシステム」と第183~184回「野村不がビューアー運用開始」で報告したように、建築のさまざまな工程においてVR技術の実用化が急速に進んでいる。
 東急建設がバンダイナムコスタジオ(東京都江東区)の技術支援のもとで開発したのが「VRゲームテクノロジーを活用した体験型安全衛生教育システム」。
 写真1は、仮設工事の際に足場板が適切に設置されているかを疑似体験しているもの。このように体験者がVR空間内においてさまざまな災害事故の発生過程を疑似体験することにより、災害事故につながる原因を考え、災害事故発生防止のために自らがどのように行動すれば良いのかを学習する。

 □感情や心理といった行動原理に及ぼすストーリー展開技術を活用することでリアルに再現□

 従来までの一般的な安全衛生教育では、災害事故の事例を用いた教本・映像などによる学習が主体であったが、本システムでは、体験者がヘッドマウントディスプレイと手足にコントローラーを装着し、VR空間の建設現場において実際に手足を動かす作業を行いながら、没入感をもって学習する体験型システムとなっている。
 数多くのゲームコンテンツに取り入れられている感情や心理といった人間の行動原理に影響を及ぼすストーリー展開技術を活用することで、建設現場の災害事故に至る過程をVR空間上でリアルに再現することに成功した。

 □体験者本人が実際に起こしやすい不安全行動をあえて誘発する設定でリアル感を醸成□

 体験型学習では、体験者に模範的行動を習得させることを目的としているが本システムのコンテンツは、災害事故の主な原因となる「気付き忘れによるミス」「横着する」といった体験者本人が実際に起こしそうな不安全行動を誘発しやすい状況設定となっており、あえて災害事故を疑似体験させることを意図して制作されている。
 本来は遭遇してはいけない災害事故を事前に疑似体験することによって災害事故発生につながる不安全行動を起こさないよう安全意識を喚起させ、「災害事故ゼロ」に大きく寄与することが期待される。
 本システムは持ち運びができるので、現場事務所の会議室などを使用して教育を行うことが可能。東急建設では本システムを展開することにより、現場で働く従業員、協力会社を対象に、安全教育の徹底と充実を図っていく。
 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週火・木曜日掲載)