BIMのその先を目指して・20/樋口一希/AI活用のアクティブ制振技術・2

2017年9月19日 トップニュース

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 NTTファシリティーズが超高層建物の長周期地震動対策として開発した「アクティブ制振技術」の実験結果を概説する。

 □建物の揺れをパッシブ制振と比較し50%以上も低減できるとの実証試験の検証結果を確認□

 「アクティブ制振技術」の有効性は、20階建ての建物を想定した大型模型試験体をNTTファシリティーズが保有する広帯域対応大型3次元振動試験システム(※)に設置して長周期地震動を再現し検証した。
 振動実験では、長周期地震動の成分を持つ地震動波形のほか、建物が共振する地震環境下における制振効果を確認するため、模型試験体の1次固有周期と同じ周期の正弦波を入力波形とする振動実験も実施した。
 その結果、建物の揺れをパッシブ制振と比較して50%以上低減できることが確認できた。

 □耐震改修工事量の削減で従来技術よりも工事コストの削減と工事期間の短縮が可能□

 既存の超高層建物への長周期地震動対策においては、パッシブ制振と同じ制振性能をアクティブ制振では概ね半数のダンパーで実現することができる。
 対策に必要なスペースを半減させ、耐震改修工事の量を削減することによって従来の技術よりも工事コストの削減(最大30%削減することを目標)、工事期間の短縮が可能となる。
 これにより、建物のオーナーに対しては耐震対策による不動産価値の向上に加え、賃貸面積に及ぼす影響を小さくすることで賃料収入に貢献し、建物入居者に対しては工事期間中の影響を最小限にとどめる。
 今後は、実際の建物への適用に向けた開発をさらに進め、10月に実機の電動アクチュエーターを用いる動作確認試験を実施、本年中に完成させ、18年1月から関西エリアのビルへの本格提供を予定している。
 ※広帯域対応大型3次元振動試験システム=マグニチュード8クラスの巨大地震時における超高層建物内部の揺れを忠実にシミュレートすることが可能な世界最高性能を誇る3次元振動台。
 (毎週火・木曜日掲載)