BIMのその先を目指して・26/樋口一希/三井住友建設の高速施工法

2017年10月19日 トップニュース

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 三井住友建設では、サトコウ(上越市)と協働で高層・超高層鉄筋コンクリート造の建築物を対象として躯体の構築から内外装仕上げまでワンフロアの施工を最短4日で可能にする「スクライム-サット工法」を開発し、運用を開始する。

 □「部分が全体・全体が部分」との単体でも完成品のユニットをアセンブリする発想が原点□

 建築物は多くの場合、一品生産物であり、製造業の代表格である自動車産業のような大量生産が前提の情報のデジタル化には不向きだ。そのためBIMの普及の背景には標準化の検討が透かし絵のように見え隠れしている。情報のデジタル化と標準化の徹底事例としては「BIMの課題と可能性」で長谷工コーポの「ATOM(Automatic Tool for Object Modeler)」について報告している。両社のチャレンジも「BIMによる情報のデジタル化と標準化の追求」との文脈で捉えると、その優れた現在性が浮かび上がってくる。
 サトコウが本社を置く上越市は豪雪地帯だ。建設業の唯一の生産拠点である「施工現場」は天候に左右され、品質管理と納期達成には常に困難が伴う。重量鉄骨、軽量鉄骨、鉄筋などの鋼材卸業をベースにして加工から施工まで一貫体制で対応してきたサトコウが開発したのが「SSUT(SATOKOU STEEL UNIT TOTAL TECHNOLOGY)工法」だ。
 単体でも完成品となる住戸のユニットを積層するようにアセンブリして建築物を仕上げることで、従来までの現場請負システムの限界を打破し「短納期と高品質の両立」を実現している。
 「スクライム-サット工法」は、三井住友建設のRC躯体の高速施工法「スクライム、スクライム-H工法」とサトコウの「SSUT工法」を本工法向けに改良した内外装ユニットモジュール「スクライム・ボックス」を組み合わせた画期的な建築施工法となっている。

 □保有技術のメリットを活かし課題を解決するべく協働開発した「スクライム-サット工法」□

 三井住友建設では、高層・超高層集合住宅の躯体構築においてプレキャストコンクリート(PCa)を用いた「スクライム、スクライム-H工法」と労務の平準化・品質管理の合理化・工期短縮などを目的としたシステム工法「DOC(one Day One Cycle)工法」を組み合わせてワンフロア最短3日の施工を実現している。
 一方で「スクライム、スクライム-H工法」では躯体構築後に内外装仕上げ作業を現場で行っているため生産性の向上が難しく、「SSUT工法」では構造的な制限により適用範囲が最大8階までと課題があった。それぞれのメリットを活かして課題を解決するため両工法を融合させるべく協働開発したのが「スクライム-サット工法」だ。
 高層・超高層RC造の建築物においては躯体構築から内外装仕上げをモジュール化することにより、今後、人手不足が予想される現場での省力化が図れ、高所での作業が少なくなり安全性を高めることができる。加えてほぼ全ての部材が工場生産のため、工期短縮だけでなく建築廃棄物の大幅削減や品質を向上させることも可能だ。
 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)