BIMのその先を目指して・27/樋口一希/配管内を走破するヘビ型ロボット・1

2017年10月26日 トップニュース

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 京都大学、早稲田大学、岡山大学、金沢大学では、分岐部分や曲がり部、バルブなどがある複雑な配管内を走破し、内部の状況を把握した上で正確な地図として自動生成するヘビ型ロボットを開発、8月29日、京都大学桂キャンパス内メカトロニクス実験室でデモ公開した。内閣府総合科学技術・イノベーション会議が主導する革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)タフ・ロボティクス・チャレンジの一つのテーマとして研究、開発が進められたもの。

 □研究開発の要素技術を統合することで複雑な配管内を走破し内部状況を正確に把握することに成功□

 これまでも配管内を走破するロボットは開発されてきたが、オペレーターが複雑な配管内で正確に挙動させるのが難しく、入手できる情報も限定されていた。加えて移動が可能な場面にあっても配管内をロボットが移動すると配管内の汚れの状態が変化し、カメラで取得したテキスチャー(※)が毎回変化することが多く、特に垂直の配管を登っていく最中には滑り落ち、ロボットの位置が分からなくなるなど、従来の画像とオドメトリー(※)によるビジュアルSLAM(自己位置決定と配管地図の同時生成)が使用できないなどの課題を抱えていた。
 これらの課題を解決するためにヘビ型ロボットとそのインタフェースの開発を進めてきた本研究開発チームは、今回、本研究開発の要素技術を統合、複雑な配管内を走破し、配管内の状況を正確に把握することに成功した。
 ※テキスチャー(Texture)=本件では「視覚的な色や明るさの均質さ」。本来は織物の質感を意味するモノの表面の質感や手触りなどを指す概念。コンピュータグラフィックスにおいては3次元オブジェクト表面に貼り付けられる模様。
 ※オドメトリー(Odmetry)=移動ロボットの車輪や関節の回転速度から移動速度を求め、それを積分して位置と姿勢を求める自己位置推定法。

 □既設建物の配管設備の日常点検だけでなく災害発生時の初動点検などへの広範囲な適用に期待□

 ヘビ型ロボットは、20個の関節を持ち、各関節のモーターを駆動させることでさまざまな移動方式に対応している。オペレーターは、表面に装着した皮膚型の接触センサーである全周圧力センサーを通して、ヘビ型ロボットが配管中へ進入する際に適切な力で配管に突っ張っているかを診断し、前進を妨げる障害物や配管の曲がりを把握できる。
 ヘビ型ロボットが曲管部の形状に合わせて螺旋形状を曲げたままの状態で移動する曲螺旋捻転運動によって、オペレーターにとっては従来、操作が困難であった曲管部での走行も可能にしている。
 これによって設備配管内の日常点検や緊急時の点検作業の効率化が図れるとともに、これまでは入手困難であった極めて正確な設備関連機器の現況データを入手できるので、既設建物の維持管理のあり方に一石を投じるに違いない。

 □外部から3次元スキャナーなどで計測不可な部分へ適用することで配管の3次元計測に威力発揮□

 すでに建築の生産工程における設備BIMの運用は不可欠なものとなりつつある中で、本技術と設備BIMとの連携が実現すれば、既設建物へのBIM-FM適用時においても設備BIMの運用メリットをさらに高度化できる。具体的には、既設建物の設備に関する3次元モデルを作成する際に、外部から3次元スキャナーなどで計測不可な部分への適用に威力を発揮する。
 次回は、ヘビ型ロボットがどのようにして配管内の状況を把握するのかの詳細と合わせて現状の設備BIMとの連携の可能性などについても報告する。
 出典:京都大学・早稲田大学・岡山大学・金沢大学・内閣府・科学技術振興機構
 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)