BIMのその先を目指して・31/樋口一希/スマートマンション登場

2017年11月30日 トップニュース

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 ソフトバンクグループのエンコアードジャパン(東京都港区)と横浜市住宅供給公社は、革新的なIoT・AIテクノロジーを全戸に導入したスマートマンション「横浜MIDベースタワーレジデンス」(横浜市西区)の竣工に合わせ、11月22日に見学会を開催した。

□スマートスピーカーと協働して稼働する革新的な取り組みによって近未来の住宅を実現させる□
 エネルギーデータのリアルタイム分析を行うプラットフォームサービス「エネトーク」をベースとして、話しかけるだけでニュースやスケジュールなども読み上げるスマートスピーカー「Amazon Echo」、テレビやエアコンなど家電を音声で操作できるWi-Fi学習リモコン「スマート家電コントローラ RS-WFIREX3」が中核的に機能する。
 今回、採用されたAmazon Echoは、アマゾンが開発したスマートスピーカーで、AIアシスタント「Alexa」に対応し、人間の音声コマンドを認識する能力をもつ。エネトークとAmazon Echoを協働して稼働させる革新的な取り組みによって、安心して暮らせる見守り・防犯機能の飛躍的進化、資産価値の向上を図るとともに、地域のコミュニケーションツールとして活躍することが期待され、今後のマンション・住宅のスタンダードとなっていくポテンシャルをもつと考えられる。

□身体の不自由な方やデジタル機器に不慣れな高齢者への支援ツールとしての活躍が期待できる□
 エネトークは、電力データから利用価値の高い各種情報を導き出すプラットフォームサービス。1秒ごとの細かな電力データから得られた波形を独自AIで解析することで、全体の電力量から主な家電の電力量を推定し、当該家庭の生活パターンを予測する。これらの抽出されたデータを組み合わせることにより、効果的な節電アドバイスや家電製品のエネルギー効率診断、高齢者見守りなどのサービスへと援用する。
 Amazon Echoは、遠隔音声認識技術と七つのマイクアレイにより、部屋中のさまざまなところから発せられる音声を明確に聞き取り、AIアシスタント「Alexa」が即座に反応する。ハンズフリーで利用が可能なため健常者だけでなく、身体の不自由な方やデジタル機器に不慣れな高齢者へのサポートツールとしての活躍が期待できる。
 スマート家電コントローラ RS-WFIREX3は、ソフトバンク コマース&サービスとラトックシステムが共同開発した、Amazon Echoと接続して音声でテレビやエアコンなどの家電を操作できるWi-Fi学習リモコン。「アレクサ、家電リモコンでエアコンをつけて」と話しかけるだけで寒い朝にもベッドの中からエアコンを起動させ、料理中に両手がふさがった状態でも、テレビのチャンネルやボリュームの変更などが行える。

□「スマホの次はスマートスピーカーだ」と注目される中でネット関連企業なども続々と市場参入□
 アマゾンがスマートスピーカーの第1号モデルを発売したのは14年11月だ。その後、Googleは「Google Home」、アップルは「HomePod」、LINEは「Clova WAVE」と続々と市場参入している。スマートスピーカーは、AIスピーカーとも呼ばれるように、音声操作に対応した対話型のAIアシスタントがクラウドサーバー上で稼働している。スマホさえも操作することなく、音声のみで操作できるのが最大の利点だ。
 IoT、AI、ビッグデータと喧しく話題に登ったのは直近のことだ。変化の速度はあまりにも早く、間髪をいれずに実用化の局面を迎えつつある。旧知の設計者が単身赴任先のマンションを一室、スマートマンション化した。帰宅してAIスピーカーに「ただいま」と話しかけると「お風呂にしますか」「食事にしますか」と答えたとか。目指すべき技術の射程は、これまでの人知を遥かに超えたのかもしれない。「建築らしからぬ」ことの最も対局にこそ「建築らしさ」を見つけ出すのも喫緊の課題となっている。
 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)