BIMのその先を目指して・46/樋口一希/鉄筋工事BIM

2018年3月29日 トップニュース

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 BIMの普及が加速化し、適用領域が広がる中でBIMソフトも目的に応じて細分化している。究極のBIMともいえる「Build twice,first virtual,then real」を地で行き、ここまで可能となったと驚きを禁じ得ない鉄筋工事におけるBIM援用について報告する。

 □複雑に入り組んだ鉄筋を細部に至るまで3次元モデル化することで事前検証の精度向上が実現□

 前連載「BIMの課題と可能性」第181回で概説したBIM/CIM対応3次元建築土木CAD「Allplan」(フォーラムエイト)。鋼の等級・鉄筋径、コンクリートの被り、鉄筋ピッチを入力、配筋中心軸を指定し、配筋対象のコンクリート面上を囲み設定すると鉄筋を配置する。縦方向でも鉄筋の種類などを指定、鉄筋を1本だけコンクリート断面上に配置した後、配置する鉄筋本数を入力して配置コマンド「OKボタン」のクリックで対象物全体を囲むように縦方向の配筋が完了する。
 鉄筋工事に特化したBIMソフト「Tekla Structures」(Trimble社)も施工BIM担当者を中心に広く知られている。複雑に入り組んだ鉄筋を容易にモデリングし、細部に至るまで正確に事前検証を行うことができるため、加工工程での無駄の削減や現場における不具合の低減につながるメリットも自明となっている。

 □設備BIMソフトと連携した梁貫通孔補強筋の設計・施工管理機能を開発して実プロジェクトに適用□

 ゼネコンでも鉄筋工事へのBIM援用を進める動きが顕著だ。竹中工務店では、鉄筋工事を対象に設計から施工まで援用できる「鉄筋工事BIMソフト~RC一貫生産支援システム」(RCS、特許出願済)を開発し、全国展開を進め累計90件以上のプロジェクトに適用している。加えてコーリョー建販(東京都文京区)と共同で機能拡充を図り、設備BIMソフトと連携した梁貫通孔補強筋の設計・施工管理機能を開発、12プロジェクトに適用している。
 梁貫通孔補強筋の設計・施工管理にはゼネコン、鉄筋工事会社、設備工事会社、補強筋メーカーなど多くのプレーヤーが関わり、従来は設計図、コンクリート施工図、鉄筋加工図、設備施工図など複数の2次元図面間で整合を図る必要があったためタイムリーな情報共有が困難で多くの手間がかかっていた。
 それらの問題を解決するべく、「RCS」では、構造計算による鉄筋の径や本数などのデータと設備設計データを整合し、梁貫通孔の設置可否を3次元モデルで確認できるようにしている。これによって設計段階において梁貫通孔同士の離隔不足によって予測される手戻りの防止が可能となった。

 □梁貫通孔を考慮した加工図や品質検査用のチェックリストも出力するので鉄骨工事会社にもメリット□

 施工段階でも、工事担当者がコンクリート施工図と設備施工図を調整した上で「RCS」を用いて梁貫通孔補強筋の補強計算を行うため、補強計算書を出力し構造設計者への確認などの施工計画を容易に実施できる。
 鉄筋工事会社のメリットも大だ。梁貫通孔を考慮し、鉄筋1本ごとの継ぎ方、長さ、形状などを記載した加工図と加工帳(集計表)の作成とともに、品質検査用のチェックリストを出力し、配筋検査にも利用できる。
 このように鉄筋の3次元モデルと設備関連の3次元モデルを相関的に活用することで鉄筋工事の納まり検討、補強筋の検討、加工図・加工帳(集計表)の作成などの業務の効率化、見える化が成立し、設計者と施工者の早期合意形成を図ることが可能となる。加えて、統合されたデータから出力されたチェックリストの活用によって情報の精度向上が実現し、建物品質の確保や生産性の向上に寄与する。
(毎週木曜日掲載)