BIMのその先を目指して・51/樋口一希/グローバルBIM社の現況を追う・3

2018年5月10日 トップニュース

文字サイズ

鹿島での施工BIMの全現場導入を前史として設立から1年余を経たGlobal BIM(GB)社。BIMサービスプロバイダーとしてコンサルティング業務を加速化させている。

 □大手ゼネコンから地方の建設会社へBIMの普及が拡がる変化の兆しを先取りして顧客開拓□

 自社主宰の「グローバルBIM」やBIM関係者が情報交換する「BIM関係」などのFacebookページを通して、東奔西走というに相応しいGB社の活動をリアルタイムでウォッチできる。直近では、地域に根づいた活動を続ける建設会社を中心にBIMの運用支援を進めている。
 GB社の提供するサービスラインナップは、〈1〉IPD(Integrated Project Delivery)〈2〉BIM Consulting〈3〉BIM Modeling〈4〉BIM Software Development)から構成される。それらサービスラインナップをベースにBIM運用支援を継続している企業のケースをヒアリングすると、BIMの普及が大手ゼネコン中心から地方の建設会社へも拡がる変化の兆しとともに、GB社の提供するノウハウがBIMの組織内への浸透を倍速化させている現況が鮮明に浮かび上がってくる。
 「設立直後は、事業拠点のある沖縄の建設会社からBIM運用支援の要請があったが、メディアなどを通じてGB社の活動が広まるに従い全国各地からの問い合わせが相次いでおり、対応を進めている」(事業本部長の吉田敬一郎氏)

 □施工BIMを進化+高度化させて施工現場に経営的な視点を導入するsmartCONを独自に開発□

 GB社からBIM運用支援を受けている建設会社に共通するのが「smartCON Planner for ARCHICAD」の採用に積極的なことだ。smartCONは、ARCHICAD(グラフィソフト社製)専用のアドオンソフトウエアで、施工現場での仮設資機材の配置ツールと各種のGDLユーティリティーを搭載、仮設計画の3次元モデルを素早く作成することで計画検討時の迅速な意思決定と高精度な計画立案を支援し、施工現場の生産性向上に寄与する。
 施工現場では、工程ごとに順次、仮設資材や重機などの配置計画を検討するため、進捗(しんちょく)に合わせて施工BIMモデルを更新する。時間的猶予は少なく、独自技術が凝縮されているので初期の基本モデルのように外部協力会社には任せられない。施工現場固有の課題解決にsmartCONは威力を発揮する。
 モデル化された山留め、構台、足場、クレーンなどの種別(タイプ)を選択した上で、名称(サイズ)、関連情報、配置、レイヤーなどの変数を入力するとパラメトリックに変更される。それらを施工BIMモデルに配置することで仮設・施工計画の迅速化と精度向上が図られる。単一現場での運用メリットも大だが、多忙を極める現場要員の効率を上げ、他現場に振り向けられるなど、人手不足と増大する工事量への柔軟な対応も可能になる。smartCONの採用によって「建てるための施工BIM」をさらに進化、高度化させて施工現場に経営的な視点を導入することができる。

 □BIMサービスプロバイダーとしての優位性を際立たせている独自ソフトウエアの開発力□

 smartCONでは2次元図面では困難であった施工計画の検討を3次元モデルで行うので「建機と構築物の干渉の有無」「クレーンの到達可否」などのチェック、「見える化による合意形成の質的改善」などを実現、PDCA cycle(Plan:計画↓Do:実行↓Check:評価↓Act:改善)を実践的に還流できる。
 GB社では、4月23日付で最新のARCHICADに準拠したsmartCON Planner for ARCHICAD 21をリリースした。オブジェクト操作の軽量化やツールパレットの見直しにはじまり、タワークレーンの追加、枠組み足場ツールの積算機能、日建リース工業社製仮設部品の仮設部品ツールとしての登録、センクシア社製ハイベースなど本設部品ツールとしての登録に至るまで大幅な機能拡張と改善を行っている。
 smartCONは、鹿島が出資したパートナー企業の韓国Doalltec(グラフィソフト・コリア)と社内運用していたシステムをベースに共同開発している。smartCONにおけるような独自ソフトウエアの開発力はGB社のBIMサービスプロバイダーとしての優位性を際立たせている。
 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)