論説・コラム

回転窓/模写の精神 [2015年4月9日1面]

 この春の人事異動などで職場が変わり、これまでとは異なる仕事に携わることになった人も多かろう。前任者からの引き継ぎもなしに経験したことのない仕事を任され、何から手を付けたらいいのかと途方に暮れる人もいるかもしれない▼物事を一から始めようとする時、先人のやり方をまねることは上達への近道の一つだ。美術の世界では、作品を忠実に再現したり、作風を写し取ったりしてその作者の意図を理解・体感する「模写」がよく...続きを読む

回転窓/それぞれの決心速度 [2015年4月8日1面]

 人には何度経験しても慣れないものがある。よく聞くのは航空機に搭乗した時の離着陸。確かに、機体が一気に速度を上げて飛び立つ瞬間などは言いようのない怖さを覚える▼ジェット機が離陸する際は、非常時の判断基準として「決心速度」と呼ばれるものを毎回計算するのだとか。滑走中にパイロットがエンジンの不具合に気付いた場合、そのまま離陸するかどうかを決断するリミットの速度だという▼決心速度に達する前であれば滑走路...続きを読む

回転窓/暮らしの費用便益比 [2015年4月7日1面]

 新年度に入り、朝の通勤電車の混雑がひどくなったように感じる。乗り換えのターミナル駅のホームは人であふれる。東京に住み、都心で働く身で東京一極集中を嘆いても説得力はゼロ。それは承知の上で、何とかならないものかと思う▼経済産業省が先日、地方移住促進策の一環で、地域の生活コストを「見える化」するシステムを作った。全国の市区町村別に、家族構成や職業、住宅の取得方法などによる平均的な家計収支と、利便性や子...続きを読む

回転窓/時代を見てきた谷根千の桜 [2015年4月6日1面]

 春の陽気に誘われて、3月末に「谷根千」に足を運んだ。東京都文京区から台東区にかけての谷中・根津・千駄木一帯を指し、今も下町風情が色濃く残る▼谷中銀座商店街には大勢の人出が。テレビでよく取り上げられるコロッケ店や焼き鳥店には長蛇の列ができ、狭い通りは歩くだけで精いっぱいだ。谷中霊園は桜が満開。古びたお墓ときれいな桜のコントラストが印象深い▼一画には最後の将軍・徳川慶喜の墓も。大政奉還や戊辰戦争の後...続きを読む

回転窓/人を大切にする企業に [2015年4月3日1面]

 「人を大切にする」。企業が成長していく上で欠かせないキーワードといえる。社会や環境に影響を与える活動に対して責任を果たす企業と積極的に取引を行う「CSR調達」は世界的な潮流になりつつある。グローバルに活動する企業ほど、そうした視点を重視することが求められる▼人権侵害、労働条件や雇用・賃金問題、労働安全衛生、環境保全…。これまで日本企業がリスクと考えてこなかった問題に対して、NGOやNPOが目を光...続きを読む

回転窓/平等の難しさ [2015年4月2日1面]

 東日本大震災の被災者と「平等って何だろう」という話になった。相手は狭い仮設住宅に家族4人で暮らしている。上の娘が小学6年生になり、思春期に入ってきたが、プライベートな空間を与えられない▼「仮設住宅内に空き部屋があるので使わせてもらえないか」。市役所に相談したが、答えはNO。基準にのっとると、子どもが中学生になるまでは広い場所には移れないという▼同じ広さの仮設住宅に一人で暮らす高齢者もいる。ルール...続きを読む

回転窓/実社会にこぎ出す若者へ [2015年4月1日1面]

 ユニークな語釈で知られる「新明解国語辞典」(三省堂)で「実社会」という語を引くと、〈美化・様式化されたものとは違って複雑で、虚偽と欺瞞(ぎまん)とが充満し、毎日が試練の連続であると言える、きびしい社会を指す〉とある。この辞書の編者は社会に出てそれほどひどい目に遭ったのかとつい同情する▼大半の企業はきょう4月1日が入社式。多くの若者たちが実社会へとこぎ出すことだろう。虚偽と欺瞞はともかく、実社会に...続きを読む

回転窓/「鉄の貴婦人」の誕生日 [2015年3月31日1面]

 1889(明治22)年の3月31日、フランス・パリの中心部にあるシャン・ド・マルス広場は群衆で埋め尽くされていた。フランス革命100周年を記念し建設されたエッフェル塔の落成式が行われたのがその理由▼凱旋門と並び、フランスのシンボルになっているエッフェル塔は、同年にパリで開かれた第4回万国博覧会に間に合わせるため、わずか2年2カ月という短期間で建設された▼総重量1万1000トンの構造体を4本の足で...続きを読む

回転窓/外国人観光客を地方創生に [2015年3月30日1面]

 年度末を迎え、この時期は歓送迎会などで飲食店に行く機会が増える方が多いのではないだろうか。東京・新橋のなじみのガード下の飲食店も連日盛況で、景気の回復を感じさせる▼ただし、客層や店の雰囲気は以前と異なる。この店は外国人観光客向けガイドブックでリーズナブルな居酒屋として紹介されたため外国人が増加。店内には聞き慣れない言葉が飛び交う。電車が通過するたびに揺れを感じながら、日本の食文化を味わってもらう...続きを読む

成田空港会社/第1PTBに歌舞伎ギャラリー開設/訪日外国人らに伝統文化紹介 [2015年3月30日5面]

 成田国際空港会社が成田空港の第1旅客ターミナルビル(PTB)内に整備していた歌舞伎体感型ギャラリー・ショップ「Kabuki Gate」が27日、オープンした。施設全体の監修を松竹が担当。同日の記念式典には両社の関係者のほか、歌舞伎俳優の四代目中村雁治郎さんが来賓として出席し、日本の魅力を発信する新施設の開業を祝った。式典の冒頭、成田空港会社の夏目誠社長は「歌舞伎は日本を代表する伝統芸能であり、外...続きを読む

回転窓/週末は桜ブレークを [2015年3月27日1面]

 東京は今週末、寒の戻りから一転して、暖かな春の陽気を迎えるという。各地でつぼみを膨らませた桜が一斉に開花しそうだ▼桜の開花予想に使われる代表品種は「ソメイヨシノ」。江戸末期から明治初頭に、染井村(現在の東京都豊島区駒込)で植木職人らがエドヒガン系の桜とオオシマザクラを交配して作り上げたとされる。この通説に一石を投じたのが、千葉大学が発表した東京・上野公園に現存する1本を原木とする新説だ▼千葉大は...続きを読む

回転窓/秘仏に願いを… [2015年3月26日1面]

 江戸時代の2人の仏師、円空と木喰の木彫り像を集めた展示会を見た。切り込み跡が荒々しく、力強さが特徴的な円空。柔らかく、丸みを帯びた像を多く残した木喰。彫り方は全く異なるが、どちらの仏像・神像にも同様の温かさを感じる▼各地を巡りながら作り上げた数々の像は人々から深く信仰された。見る者に荘厳さや畏怖の念を抱かせる像とは異なり、素朴なぬくもりに満ちた像だからこそ、庶民に愛され続けたのだろう▼一方で、人...続きを読む

回転窓/造らない現場に挑む [2015年3月25日1面]

 東日本大震災からの復興に向けて歩む福島県。県を訪れる観光客数は回復傾向にあるが、福島第1原発事故の影響はいまだ大きい。事故の収束とともに、対象地域で進められている放射性物質を除去する除染作業が急がれる▼本紙1面に「除染-『造らない』現場に挑む」が24日まで計7回掲載された。国が直轄事業で除染を行う除染特別地域。この地域を取材し、どのような体制で除染が実施されているかをリポートした▼対象となるエリ...続きを読む

回転窓/国産木材を使おう [2015年3月24日1面]

 こう書いたのを読んだだけで鼻がむずむずする方もおられよう。3月も下旬に入り、東京ではスギ花粉の飛散はピークを越えたようだが、4月にはヒノキ花粉がピーク。いましばらく辛抱が必要だ▼今や国民病ともいえる花粉症。遠因は戦後の木材需要急増に対応して国が進めた拡大造林政策といわれる。広葉樹林を伐採し、成長が速く商品価値の高いスギやヒノキを大量に植える政策である▼だが当ては外れ、安い外材に押されて国産材の需...続きを読む

回転窓/外国人受け入れの覚悟 [2015年3月23日1面]

 先週、閉幕した国連防災世界会議では、かつてないほど大勢の外国人が杜の都・仙台を訪れた。不慣れな海外からの客人への対応に地元の方も戸惑ったようだ▼タクシーの運転手さんは、2人の外国人を乗せると後部座席右側ドアからも降車されてヒヤリとしたという。「何かあったらこちらの責任になるんですかね」と苦笑い▼東京行き新幹線を待つ乗客の先頭にいた中東系の3人の紳士は、のんびり会話をしながら新幹線に乗り込むと、後...続きを読む