論説・コラム

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シリーズ・国のかたちを考える2018/東京電力パワーグリッド副社長・岡本浩氏  [2018年6月21日1面]

岡本氏

 ◇インフラ融合で新たな価値創出
 これからの日本に大きなインパクトを与える変革の要因は、人口減少(Depopulation)、脱炭素化(Decarbonization)、分散化(Decentralization)、自由化(Deregulation)、デジタル化(Digitalization)の五つの「D」に整理できる。中でも地域に根差した電力事業には、人口減少や過疎化といった人口動態の変化が非常に大きな影響を及ぼす。
 2015年にCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)で採択されたパリ協定では、産業革命前からの温度上昇を少なくとも2度以下に抑えるという大変に厳しい目標が定められた。二酸化炭素の排出量を劇的に減らさなければならず、そのためには最終エネルギー消費の相当量を電気にシフトするのと同時に、再生可能エネルギーの普及も含めた一次エネルギー源の脱炭素化という両方に取り組んでいくことが欠かせない。建物の省エネ性能を高めることも必要だが、エネルギーそのものを脱炭素化していかないと目標をクリアするのは難しい。
 従来は大規模発電所の整備に投資し、そのスケールメリットで発電事業を展開していくスタイルであったが、再生可能エネルギーのコストダウンが進み、住宅や工場の屋根の上に設置された太陽光発電設備が普及してきた。2050年には大規模発電所での従来型電源と、太陽光や風力など再生可能エネルギーの分散型電源がほぼ半分ずつといった構成になっているだろう。火力発電など従来型の施設についてはエネルギーとしての発電量は減るが、不確実性に対応する役割は一層重要になる。
 デジタル化の進展もこれからの発電や送配電の在り方を大きく変えていく。それぞれの分野に蓄積されていたデータがつながり、「もの」から「こと」を提供するビジネスモデルに変わっていく。電力事業でも1キロワット時の電気をいくらでお届けしますというビジネススタイルのままでは価格競争しか残されておらず、環境や利便性などの面からどれだけの価値を付加して提供できるかが問われている。
 テクノロジーの進化で電気自動車が普及すると、道路上を人やものが移動するだけでなく、蓄電池を搭載した車が電気も運ぶ。道路と電気の二つのネットワークが新たな社会システムとして融合していく効果は大きい。
 人口減少と超高齢化社会に対応した都市の在り方として、都市機能を集約したコンパクトシティーへの転換が注目されている。今後は公共施設などの集約だけでなく、電気などのエネルギー設備をどうするかも含めた総合的な検討が求められる。
 (おかもと・ひろし)1965年東京都生まれ。93年東京大大学院工学研究科電気工学専攻博士課程修了、東京電力(現東京電力ホールディングス)入社。常務執行役経営技術戦略研究所長などを経て、17年現職。主な著書に『エネルギー産業の2050年 Utility3.0へのゲームチェンジ』(共著)など。

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