論説・コラム

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シリーズ・国のかたちを考える2018/福島県南相馬市長・門馬和夫氏  [2018年9月10日1面]

門馬市長

 ◇安心な暮らしへ「100年のまちづくり」
 震災前の人口は7万1000人だったが、震災直後に1万人程度まで激減した。福島第1原発事故で飛散した放射性物質の除染作業が進んで屋内退避が徐々に解除され、2016年7月にほとんどの避難指示区域が解消された。ただ現在の人口は5万5000人と震災前を大きく下回っている。住民基本台帳には6万1000人が記載されており、6000人余りが市外に避難している状況だ。
 津波で被害を受けた防波堤は復旧し、災害公営住宅の建設や除染といった事業は国の尽力でほぼ完了しているが、生産年齢人口が減り特に子どもは半数となった。地域の未来を担う若者がいないのは深刻だ。
 南相馬市の魅力は家族や友人らと安心して暮らせることだ。気候も温暖で、鉄道や高速道路など社会基盤がしっかり整備され、下水道など都市機能も充実している。歴史も古く、震災の年も中止しなかった国指定の重要無形民俗文化財「相馬野馬追」も毎年開いている。
 課題は若い世代が安心して暮らせるまちづくりを実現することだ。「教育・子育て」「医療・介護」「仕事づくり」「インフラ」の4点に力を注いでいる。先人が築いてきた歴史ある南相馬市を再生するため「100年のまちづくり」と「家族や友人と暮らせるまち」をキーワードに市政運営を進めている。
 最も注目しているのがロボット関連産業を含めた新産業の創出だ。2006年に金型や機械の部品などを製造する市内企業が集まり、機械工業振興協議会を立ち上げた。震災後、国と県による「福島イノベーションコースト構想」に基づき、ロボットテストフィールドが市内に建設されることになった。
 ロボットテストフィールドは既に着工し、20年3月までに全体が完成する予定だ。協議会の企業がロボット開発の試作に参加したり、市内から人材を輩出したりするなど大きな効果が期待される。その隣には約20ヘクタールの工業用地もあり、立地企業には国の支援制度に加え、市独自で固定資産税の優遇といったメニューを用意している。チャレンジしようとする個人や企業を歓迎している。
 昨年7月に着工した常磐自動車道の4車線化は流通面で大きな役割を果たすと期待しており、一刻も早く完成してほしい。南相馬~浪江インターチェンジ(IC)間のスマートICの設置も要望し、18年度の事業採択を目指している。
 国による復興期間は8年目に入ったが、すべての取り組みが10年で終わることはない。ハード面からソフト面に移行する中で、医療の人材確保や教育分野できめの細かい支援をお願いしたい。
 (もんま・かずお 18年1月、第4代南相馬市長に就任。64歳)
 【南相馬市】2006年1月に原町市と小高町、鹿島町が合併して誕生。福島県浜通り北部の太平洋に面し、いわき市と仙台市のほぼ中間に位置する。1000年余り前から続く伝統行事「相馬野馬追」は全国的に知られ、500余りの騎馬武者が勇壮な戦国絵巻を繰り広げる。

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