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北海道胆振東部地震発生から1カ月・下/本格復旧へ課題検証/指示体制の見直しを  [2018年10月4日2面]

災害復旧に向けた取り組みが本格化する=9月8日、厚真町(北海道開発局提供)

 北海道胆振東部地震で被害を受けた地域の復旧が本格的に動きだす。政府は9月28日の閣議で、今回の地震を「激甚災害」に指定する政令を決定。道は総額878億円の復旧・復興対策をまとめた。9月下旬には強い揺れに見舞われ大きな被害が出た厚真、安平、むかわの3町で、仮設住宅の建設が始まった。北海道の高橋はるみ知事は「北海道は冬の訪れが早い。仮設住宅整備などの対応を急がなければならない」との方針を表明している。
 清田区が液状化の被害を受けた札幌市では、道路陥没といった被害状況の調査と結果の解析、対策の検討を急ぎ、年内にも対処方法を決める考え。地震発生に伴い札幌市の建設局土木部内に新設された清田区里塚地区市街地復旧推進室の櫻井英文室長は「現在実施している工事は一時的な応急復旧にすぎない。対策工が決まり次第、本格的な復旧に着手しなくてはならない」と話す。
 復旧工事の本格化を進めると同時に、地震を通して露呈した課題の検証も必要だ。
 「応急復旧工事に当たり、人手が圧倒的に足りなかった。何とか人員を確保してしのいだが、10年後に同じ状況になったらと考えると、とても怖い」と話すのは、札幌市清田区災害防止協力会の櫻修二会長。陥没や亀裂が起こった道路の応急復旧工事は、歩行者の安全を守るためにガードマンを配置しなくてはならない。だが応急復旧工事では人手が足りず、ガードマンの確保に苦慮した。
 「たとえ機械と作業員がそろっていても、ガードマンがいなければ作業は開始できない。建設業の人手不足は災害が起こった時、深刻な問題となって露呈する」と指摘し、先行きを危惧(きぐ)する。
 災害時の指示体制の見直しを求める声もある。室蘭建設業協会の中田孔幸会長は「行政から指示を待って対応するという、建設業が受け身の災害対応には限界がある」と指摘する。
 発災後は携帯電話が使えず、道と室蘭建協の間でスムーズな意思疎通ができなかったという。そこで両者がより連携して対応できるよう災害対策支援会議を発足。機械の配置や被災地に手配する建設会社の選定などについて、室蘭建協が道に助言しながら対応を協議した。「あらかじめ官民が連携した体制をつくり、役割を決めておけば、もっとスムーズな対応ができたかもしれない」と振り返る。
 地震を通じて明らかになったのは課題ばかりではない。「地域を守る」という地元建設業の役割も改めて認識されるようになった。中田会長は「行政の担当者が数年おきに異動するのに対し、地元建設業は何十年にもわたって地域にいる。現場を知っているのは地域の建設業者なのだと痛感した」と話す。
 地域ぐるみの減災・復旧に取り組む建設会社もある。帯広市に本社を置く宮坂建設工業は、停電時に本社の自社発電設備を利用して市民向けに携帯電話の充電サービスを実施。約1000人の一般市民が集まりサービスを利用した。同社は毎年市民と一緒に防災訓練を実施している。9月14~17日に実施した防災訓練は地震の影響で市民の防災意識が高まり、例年約1000人だった参加者が今年は4000人を超えたという。
 本格復旧が動きだす中、見えてきた課題と今後の地元建設業への期待。復旧・復興への取り組みが本格化するのはこれから。「地域を守る」という使命を果たそうと、建設産業に関わる多くの人が前を見据えている。
 (北海道胆振東部地震取材班)

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