論説・コラム

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シリーズ・国のかたちを考える2018/兵庫県豊岡市長・中貝宗治氏  [2018年11月8日1面]

中貝市長

 ◇目指すのは「小さな世界都市」
 私たちが目指す都市像は、小さな世界都市「ローカル&グローバルシティ」だ。大都市が偉く、人口規模の小さなまちは偉くないといった価値観を壊すため、小さなを「ローカル」と訳し、豊岡に深く根差しながらも世界で輝く。そして「小さくてもいいのだ」という、堂々とした態度のまちにしたいと考えている。
 取り組みの柱はコウノトリの野生復帰をシンボルにしたまちづくりだ。「コウノトリも住める 豊かな自然環境や文化環境の創造」を合言葉に、「いのち」を育む政策を進めてきた。その結果、今では当たり前の存在になってきた。これには海外も注目し、例えばコウノトリを育む過程で生まれた「コウノトリ米」はニューヨークや香港、シンガポールなどへの輸出も始まった。
 外国人観光客も増えてきた。グローバル化が進展する中で、多くの人がローカルなものを求めて旅をする。そうした人の要望に応えるには偽物ではなく、世界に通用するローカルにこだわる必要がある。顕著な成功例が城崎温泉だろう。伝統的なまち並みや文化が世界の人々の心を引き付け、6年間で外国人宿泊客数は40倍にも増えた。
 アートも豊岡の売りの一つ。演劇とダンスに特化し、最長3カ月間にわたって無料で滞在製作が行える「城崎国際アートセンター」には、世界中から一流のアーティストが続々とやって来るようになった。地道な取り組みが実を結び、小さくても魅力的なまちとして認知され、同時に市民も「自分たちは世界で輝いている」という誇りを持つようになったことは非常にうれしい。
 豊岡を含む兵庫県北部の但馬地域には、コウノトリの野生復帰という世界最先端の取り組みなど、見るべき価値がたくさんある。そのためにも道路などのインフラ整備は重要だ。京阪神都市圏との連携強化を目的とした北近畿豊岡自動車道はようやく市内まで整備が進んできた。人・モノの交流や観光を支える地域の大動脈と同時に、災害時のリダンダンシー(多重性)確保の面でも重要な道路だ。
 但馬地域にとっては「命の道」という意味合いも大きい。東京は3次救急病院が20以上ある一方、同じ面積を持つ但馬地域には豊岡病院しかない。ドクターヘリに加えてドクターカーを運用しており、消防本部から出動する救急車と密に連携し、1秒でも早く患者と接触することで救命率の向上に努めている。
 この仕組みは成果を上げている。高速道路が充実すればするほどその恩恵を受ける人が増え、日本で最も早く救急医療を受けられる場所になるだろう。過疎地の医療を変えるモデルになるかもしれない。「この道路への投資は必ず日本のためになる。決して損はさせない」。今後もこの思いを国や県に訴え続けていく。
 (なかがい・むねはる 兵庫県議会議員を経て2001年7月の市長選で初当選。現在4期目。64歳)
 【豊岡市】兵庫県北部の但馬地域に位置する中心都市。2005年4月に1市5町が合併し、新「豊岡市」が発足した。面積は県内最大。日本で最後の野生コウノトリの生息地として知られ、保護・繁殖・共生の取り組みは海外からも注目されている。

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