技・人づくり専門工事業ファイル・16/宮本工業(山口県宇部市)

2018年9月11日 トップニュース

文字サイズ

 ◇安心して任せてもらえる会社めざす/若手採用へ情報発信にも注力

 1985年設立の宮本工業(山口県宇部市、宮本ゆり子社長)は、大手や地場のゼネコン各社が県内で手掛ける現場で活躍する鉄筋工事会社だ。現在社員は30人。うち15人が技能工として現場に出る。「全員が有資格者」という目標を掲げ、「当社の技能工ならば誰が現場に出向いても安心して仕事を任せてもらえる、そんな会社でありたい」と宮本社長は話す。
 創業者だった夫の急死に伴い、宮本社長が就任したのは2001年。急きょ会社を背負うようになって17年が経過した今年、念願の新社屋が完成した。
 RC造の現場を手掛ける工事会社ながら、あえて木の香り漂う木造を採用した新社屋で、朝は現場に向かう技能工たちを見送り、夕方には戻ってくる彼らを出迎える。仕事を終えた後に仲間同士が語り合えるよう、ゆったり座れるスペースも設けた。そこには「社員が心豊かに安心して働ける職場を作りたい」という、宮本社長の思いが込められている。
 新社屋完成に併せて8月に開いた納涼会には社員の家族を招待。ビニールプールで子どもたちを遊ばせバーベキューも楽しんだ。ゼネコンから安全表彰をもらった社員に感謝を込めて宮本社長が家族の前でたたえた。そんな心温まる納涼会後、参加した家族から「良い夏休みのひとときを過ごすことができました」などとつづられた手紙が届いた。
 山口県鉄筋工業協同組合の理事長も務める宮本社長は、人材育成にも精力的に取り組む。山口県建設業協会(井森浩視会長)とのタイアップで行う2日間の新規入職者研修会は3年目。新入社員が入れば参加させ、社会人としての心構えやあいさつの仕方、現場入場時の心得などを学ばせている。
 会社では現場経験を3年積めば、2級技能検定を受験させる方針。資格取得を目指して社屋で行う練習で技能向上にも努めてきた。こうした取り組みを重ねながら「いぶし銀のような企業になりたい」という。組合でも技能の底上げを図ろうと、来年から自主的な技能大会の定期開催も計画している。
 ただ、こうした努力にもかかわらず若者の定着は難しく、悩みの種になっている。「毎年新規採用で4~5人は採りたい」というが、今年春の採用はゼロ。現場に出る技能工の年齢も離れてしまっている。荷造り方法一つでも他社とは異なる会社のカラーを先輩から後輩へ受け継いでいくには、継続的な人材採用は欠かせない要素となる。
 そこで力を入れ始めたのが、あらゆる手段を通じた知名度アップ戦略だ。ホームページを作り直し、ブログやフェイスブックの更新頻度を高め、8月の納涼会などの様子も投稿した。旧社屋解体から新社屋が出来上がるまでの過程を撮影した動画もアップし、「少しでも当社のことが若い人たちの目に触れ、興味を持ってもらえるようにしたい」と話す。
 新社屋を掲載した会社の新しいパンフレットは、特注クリアファイルに入れると鉄筋が組み合わさるように見えるなど工夫を凝らした。県内高校に配布するなどして、「一緒に働いてみませんか」と呼び掛けている。
 =随時掲載