BIMのその先を目指して

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BIMのその先を目指して・79/樋口一希/NTTデータとIPD・下  [2018年12月6日]

建築主、設計者、建設会社、協力会社などが最適な建物を建設するという目的を共有して最も有効なプロセスを協働する形態であるIPD(Integrated Project Delivery)。NTTデータと専門工事業者としてプロジェクトに参加した新菱冷熱工業の挑戦に肉薄する。

 □アナログ的な手法では困難となっていたデータセンターの管理運用をBIMでデジタル転換□

 NTTデータがIPDを主導したのはプロジェクト対象がクラウドベースとして最先端のデータセンターであったからだ。設備比率が高いデータセンターは保守業務量が多くLCC(ライフ・サイクル・コスト)が大きい。最新スペックへの恒常的な更新のための継続的な工事も発生する。ダイナミックに稼働するデータセンターの運用要件を満足させるためには、従来のアナログ的な施設管理手法では困難となっていた。
 「創る」=設計BIMと「建てる」=施工BIMでの見える化+情報共有が生産性改善と品質向上に貢献するとの建築内部での認識は自明となった。NTTデータは建築主としてダイナミックに「施設運営(運用して経営)する」=FM BIMの有効性に着目してIPDを主導した。建築主のためのBIM成立がBIM普及の重要な要諦であるという論考が立証できた。

 □VHOでのデジタル情報はFM BIMデータベースでリアルな建物とデジタルツインとして稼働□

 プロジェクト開始後、BIM分科会を設立、「BIM実施計画(BIM Enforcement Planning)」を明文化して関係者間で情報共有、運用された。IPD体制は施工段階でのBIMの実行計画+実施を経て最終段階でのVHO(Virtual Handover:バーチャル・ハンドオーバー=仮想引き渡し)へと引き継がれた。シンガポール建設局の研修機関であるBCA(Building and Construction Authority)Academy併設のBIM Studio入り口に掲げられていた「Build Twice,Frist Virtual,Then Real」。「二度建てる、最初はバーチャルで」とのデジタル情報が「そしてリアルで」と引き継がれる際の重要な手法としてVHOを捉えることもできる。
 VHOは2段階に分けて実践された。第1段階(VHO1)は、空間情報の引き渡しから空間確定(合意形成)へ至るための〔モデルアップ〕→〔チェックバック〕→{確認モデル}の工程の円環であり、第2段階(VHO2)は、第1段階に基づいた属性情報の引き渡しであり、{csv}→{DBシステム}間の循環として実践された。VHO1+VHO2を経て構築されたBIMモデルの属性情報は保守・運用システムへ取り込まれ、「運営される」=FM BIMデータベース上でリアルな建物と図にあるように、デジタルツインとして稼働している。

 □BIM運用を投資と捉えることで顧客へのアドバンテージを担保してビジネスチャンス創出□

 BIM導入期には3次元モデル構築に要する膨大なコスト負担が危惧された。設計施工段階でのBIM運用での見える化+情報共有が業務効率改善に貢献すると認知された後も、BIM運用は必要悪のコストとしても捉えられている。コストとして捉える限り、減算はできるがゼロにはできない。NTTデータでは、「BIMは建築主が有効に活用することでその役割が完結する」(佐々木淳・ビジネスソリューション事業本部ファシリティマネジメント事業部PM推進担当部長)との共通認識の基でBIM+IPDをコストではなく、将来につながる投資として捉えた。
 投資であるからは回収もくろみが成立する。可用性に優れるデジタル情報によってLCCを削減し、最新スペックへの更新要求にも臨機応変に対応できれば顧客サービスへのアドバンテージにもなる。
 「IPD契約にのっとりVHOとしてBIMモデルをデジタル納品しており対価も申し受けている」(谷内秀敬・新菱冷熱工業技術統括本部BIMセンター専任課長)
 流通性と透明性に優れるBIMは建築主と協力会社との対等な関係を成立させ、BIM援用のノウハウはウィン・ウィンなビジネスチャンスの創造へと結びつく。
 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)

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