論説・コラム

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シリーズ・国のかたちを考える2019/東京ガス副社長・穴水孝氏  [2019年1月7日1面]

穴水氏

 ◇垣根なくしエネサービス共創
 安全を確保しながらエネルギー供給の安定性と経済性をいかに高め、二酸化炭素(CO2)削減などの環境対策にどう取り組んでいくか。こうしたエネルギー政策の基本的な考え方を踏まえ、エネルギー事業のかじを取る必要がある。
 液化天然ガス(LNG)は化石燃料ではあるが、石炭や石油に比べるとCO2の排出を抑えられるなど、環境性に優れる。経済性でも天然ガスは優位性を発揮し、石油・石炭を使っている需要家には燃料を天然ガスに転換させるポテンシャルがある。世界中でLNG需要が増大し、アジア諸国でも今後さらに増えてくることから、いかに有利な条件で調達できるかが大きな課題だ。東京ガスはLNGを1969年に導入開始し、今年で半世紀を迎える。世界各国から調達の多様化を進めてきた強みがある。
 災害時のエネルギーの安定供給で都市ガスの果たす役割は大きいだろう。中圧・高圧のガスパイプラインは地震に強い。こうした強靱(きょうじん)性のあるインフラで非常時もガス供給とコージェネレーションシステムの発電などを継続し、BCP(事業継続計画)への対応やBCD(業務継続地区)の形成につなげる。
 電力・ガス市場の小売自由化に伴い、料金を安くすることもあるが、事業として採算を確保しなければならない。価格競争だけでなく、顧客に対して付加価値の高いサービスを提供していくことが、競争力の強化につながる。
 従来のような電力やガスの垣根がなくなりつつある中で、総合的なエネルギー事業の戦略がより重要となり、他の事業者とのアライアンスも欠かせない。地元のガス・電力会社と競争するのではなく、協調関係を築く。それぞれの事業領域や地域・分野で培った経験・ノウハウを持ち寄り、新たなエネルギーサービスを共創していく。
 地域に根付きながらエネルギーを長年供給してきた信用力やブランド力は今後も大きな財産だ。首都圏を中心に、国内で築いた事業基盤の維持・拡充は進めるが、人口減少時代に入り、省エネ対策の進展などで国内エネルギー需要の大幅な伸びは見込めない。
 一方で、海外市場には相当大きなポテンシャルがある。エンジニアリング力や資源の調達力、日本が得意とする省エネ技術やスマートエネルギーネットワークなどを前面に出しながら海外事業を展開する。
 再生可能エネルギーのほか、水素が有望なエネルギーの利用形態の一つであることは間違いない。2020年東京五輪・パラリンピックの選手村のある東京・晴海地区での水素タウン構想は、将来の都市モデルとして積極的にチャレンジしていきたい。街づくりの川上段階からエネルギーや交通システム、セキュリティー、レジリエンス(防災・減災)などをより深く検討することが求められている。
 (あなみず・たかし)1959年生まれ。福島県出身。85年早大大学院理工学研究科修士課程修了、東京ガス入社。2015年執行役員、16年常務執行役員資源・海外本部長、17年取締役兼常務執行役員海外本部長、18年代表取締役副社長執行役員エネルギーソリューション本部長兼電力本部長。

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