BIMのその先を目指して

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BIMのその先を目指して・85/樋口一希/進展する奥村組のBIM運用・上  [2019年1月31日]

図1:底面を平面形状に3分割した曲面スラブ

図2:BIMモデルから取り出したRC柱頭+鉄骨柱の寸法

 奥村組のBIM運用が加速している。BIMの優位性を顕著に示す二つの案件を例に挙げて現状を紹介し、さらなる展開を見据える。

 □専門部署ではなく設計者や施工担当の実務者が中心になってBIMを案件に即して実利運用□

 「初めての施工BIM」として奥村組のBIM運用を「BIMの課題と可能性」第138~140回で報告したのは16年12月だった。BIM導入から1年余の早期での報告だったが、現在は二つの指標において当時をはるかに上回る進展を見せている。第一は、BIMの専門部署(BIM推進室)ではなく、施工担当の実務者が中心になってBIMを利用していることであり、次には、施工上難解な課題をBIMを用いて克服する成功体験を組織内で共有できていることだ。
 事例1は、事務所ビルの1階エントランスに採用された曲面形状の屋根スラブをBIMモデル化して設計および施工で援用したもの。事例2は、多目的ホールの客席を支える複雑に交差した鉄骨トラスをBIMモデル化し、施工上の問題を解決したものである。両事例とも3次元モデルによる見える化がなければ、実現が極めて困難となったもので、これらの経験は貴重な知見として全社に展開、共有されている。

 □BIMにより曲面スラブを3次元モデル化+スラブを3分割し最適解となる屋根構造を決定□

 建物は鉄骨造・地上4階建て・延べ床面積約5000平方メートルの事務所ビル。難易度の高いエントランス屋根の曲面デザインの実現にBIMソフト「GLOOBE」で挑戦した。
 完成時に3次元曲面となるエントランスの屋根は、屋内のスラブとそれを支える鉄骨柱、跳ね出し鉄骨庇で構成、支持されている。設計デザインをBIMで再現し、図1のように上側曲面スラブ+鉄骨柱+RC柱頭+RC立ち上がり+庇の下地鉄骨の配置や型枠の施工性を検討した。その結果、曲面スラブの底面を3枚の平面に分割する合理的な最適解を得た。
 施工に際してはスラブの各部納まりのより高精度で詳細な検討が求められた。RC造のスラブの水勾配と外周部の防水立ち上がり寸法を確保しながらスラブ厚を決定した。
 3枚に分割したスラブ底面の勾配はそれぞれ異なるため、RC柱頭の形状と鉄骨柱の高さも個々に異なる。従来は難題であった図2のような曲面スラブの底面と接するRC柱頭とそれを支える鉄骨柱の正確な寸法も、BIMによって容易に計り出すことができた。BIMからはコンクリートスラブや鉄骨の部材寸法を把握し、型枠製作や鉄骨製作にも援用した。
 3次元BIMモデルによる見える化効果が発揮された事例であり、2次元図面では設計者が意図するデザインの実現や関係者間の合意形成が困難であったに違いない。

 □難易度の高い施工箇所について現場実務者からBIM推進室へ相談が寄せられるケース増加□

 本事例のように難易度の高い特殊な案件についてBIM推進室へ相談が寄せられるケースが増えている。奥村組ではBIMによる業務効率化は当然のこととなり、BIMだから実現できる案件への挑戦という新たなステージに到達している。
 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)

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