BIMのその先を目指して

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BIMのその先を目指して・87/樋口一希/久米設計のBIM推進策・1  [2019年2月14日]

BIM導入時の課題と対策

 久米設計の現在を通して組織設計事務所のBIM運用を組織論的な側面から明らかにするとともにさらなるBIMの可能性を探る。

 □BIM導入時の一時的な生産性の低下を直視してマイナス幅の軽減と早期原状回復を目指す□

 「BIMは離陸して巡航高度に達した」が「シートベルトを外すサインは出ていない」。BIM普及のターニングポイントを迎えている状況下、BIMからCADに逆戻りするようなケースを防ぎ、いかにしてBIM導入を成功させるか。古川智之氏(久米設計設計本部第2医療福祉設計部主査)がAutodesk University Japan 2018「BIMのトップランナー外伝 ここでしか聞けない本音トーク」で提案した示唆に富むBIM推進策を解き明かす。
 図にあるようにBIM導入時には従来業務とBIM運用が並行、重複するから一時的に生産性は低下する。ゼロではなく、マイナスからの出発だから生産性向上は夢のまた夢だ。マイナス幅を正確に測定し、対策を講じて埋め合わせなければBIM導入に着手もできない。
 BIM推進の立場からは触れにくい現実を直視した上で一時的な生産性低下を極小化するための指標と対策を提示している。第一には生産性低下の軽減であり、次には経過時間を短縮して早期の原状回復を図ることだ。合わせて最も重要なのは、BIM導入を個人の努力に負わせるのではなく、リスクを組織的にヘッジする対策を講じることだ。

 □BIMは建築的なI=Informationの集積なのを共有した上で「設計者自らさわるBIM」を衆知□

 手描きから2次元CADへの移行では、ペンからPCへの作図道具の変化が主であり、設計情報を図面に落とし込む設計行為自体の変化は比較的少なかった。一方、BIMでは入力した3次元モデル・情報から2次元図面を作図する。一つの情報は複数の図面と連動し、入力手順を間違えるとかえって二度手間ともなる。設計者とオペレーターとの協働においては、両者ともにBIM+作図の相関性への認識があり、それをチーム内で共有できる状況が好ましい。久米設計では2次元CADとは異なり、BIMは建築的なI=Information+M=Modelingの集積であることを設計組織内で共有した上で『設計者自らさわるBIM』を実践している。
 BIM導入に際して一時的に低下する設計者の生産性を早期にゼロ地点まで引き上げ、設計者自身が生産性向上を明示的に認知するまで積み上げるためには、社内外の環境改善と継続的な企業努力が求められる。

 □ライブラリなどの環境整備+高性能パソコン・BIMソフトの購入といった投資を実施□

 2次元図面(CAD)から3次元モデル(BIM)へスムーズに移行できるようBIMソフト「Revit」のテンプレートやライブラリの整備を行った。組織面では、設計チーム+設計推進チーム+外部サポート+KDA(久米デザインアジア)から構成されるBIM設計体制を構築した。
 早期の原状回復のためにはBIM研修などの社内教育体制の確立、ICTスキル面での外部サポート体制の充実、高性能パソコン+BIM周辺ソフト購入などしかるべく(コストではなく)投資を行った。
 BIMに関する情報、質疑応答の記録などを一元管理する〔DocBaseによるBIMナレッジマネジメント〕というデータベースも運用している。「カーテンウオール(ガラス)のコーナーのマリオンを消すには?」「LumionでVRレンダリングからOculus Goでのプレゼンテーション手法の共有」など日常実務に密接した情報がやりとりされていた。
 久米設計では2007年のBIM試行導入から、S市立病院での本格的なBIM活用を経て18年9月には稼働BIMプロジェクト約30件(基本計画~実施設計、設計監理)へと至った。古川智之氏の所属する医療福祉設計部では設計者全体の約80%がBIMユーザーとなっている。
 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)

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