BIMのその先を目指して

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BIMのその先を目指して・89/樋口一希/久米設計のBIM推進策・3  [2019年2月28日]

「BIM 360 Design]によるクラウドベースのBIM運用

 大規模病院など医療施設の設計におけるBIM運用を主題として久米設計のBIM状況を探索する。

 □「医療施設の設計とBIMの親和性は高い」という実態を大規模病院の設計事例から確認する□

 延べ床面積4万平方メートルを超える大規模病院の一例では、部屋数は約2000室、ドア・窓など開口部は約3000カ所にのぼる。診察室や検査室など異なる機能ごとに部屋が細分化され、それぞれの医療機能に応じた個別の仕様が要求される。また、プライバシー保持と衛生面への配慮などから動線確保には医療施設特有の留意も求められる。
 従来、それらの要素・条件は、CADによる2次元図面と表計算プログラムなどを別々に用いて設計に使用していたが、BIMでは、それらの要素・条件は全てBIMのI=Information+Modelingの集積と捉え、データベース化できるので対象建物の建築情報を一元的に管理できる。図面と表、それぞれ独立した情報管理に不自由さを感じていた設計者はBIMのメリットを感得すると旧来の設計手法には戻れなくなる。古川智之氏(久米設計設計本部第2医療福祉設計部主査)の所属する医療福祉設計部では設計者全体の約80%がBIMユーザーとなっている。

 □複数の遠隔地でBIMソフトを用いて作業するチームによる設計コラボレーションを実現□

 久米設計では、オートデスク社の「BIM 360 Design」というクラウドベースのソリューションを用いてKDA(KUME DESIGN ASIA:ハノイ・ホーチミン)などをサポートチームとして編成し、BIMによる多拠点・同時連携体制を敷いている。「BIM 360 Design」は、「Collaboration for Revit」と称していたことからもわかるように、複数の遠隔地でBIMソフト「Revit」を用いて作業するチーム同士による設計コラボレーションを実現する。
 2019年竣工予定の医療施設のBIM画面を見る機会を得た。画面には対象建物の3次元モデルが表示されており、左側の〔Communicator〕欄には、操作対象のファイルにアクセスしている複数の設計者名と「中央ファイルとの同期が完了しましたよ!」などのコメントがやりとりされていた。BIMはネットワークを介して遠隔地で離れたチーム間で運用する状況となり、「協働設計」ともいえるノウハウが蓄積されている。

 □設計段階から施工者が参画して技術協力するECI方式にも効果を発揮するクラウドベースのBIM運用□

 「BIM 360 Design」の運用は、ECI(Early Contractor Involvement=アーリー・コントラクター・インボルブメント)方式によるS病院プロジェクトでも成果を上げた。ECI方式は、14年施行の「公共工事の品質確保の促進に関する法律の一部を改正する法律」で新たに規定された技術提案・交渉方式。設計段階から施工者が参画して施工の実施を前提として設計に対する技術協力を行うものだ。プロジェクトの設計段階より施工者の技術力を設計内容に反映させることでコスト縮減や工期短縮を実現する。
 設計段階から前倒し的に施工者の技術協力を得るために威力を発揮するのが「BIM 360 Design」によるクラウドベースのネットワークだ。S病院プロジェクトを概説する資料には、ECI方式で施工者を選定する際に、「実施設計・施工時のBIM活用ルールを発注要綱に記載」と明記されていた。施工者となったゼネコンは「BIM 360 Design」上のS病院の中央ファイルにアクセスし、リアルタイムで同時閲覧、同時作業することで実利的にECI方式を実現させる。
 2次元CAD黎明(れいめい)期にも久米設計を取材している。複数レイヤーに意匠・構造・設備の図面を分けて、平面的ではあるが干渉チェックなどを行う中で、2次元CAD運用に適したチームも編成していた。そのチームを筆者は「新しい設計部」と表現した。クラウドベースのBIMの本格運用によって「Digital design organization」ともいえる設計組織が出現しつつある。
 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)

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