BIMのその先を目指して

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BIMのその先を目指して・90/樋口一希/設計者の活動領域を拡張するBIM・上  [2019年3月7日]

大川小学校を再現したBIMモデル

災害公営住宅の総合設計計画

 第三のキャリアをBIMによる起業からスタートした市川明氏(BIMデザイン顧問)。多方面でのBIM運用の実績を通じてツールとしてのBIMが設計者の活動領域をいかに拡張するのかを検証する。

 □BIMソフトを用いた多方面にわたる実証実験や実践的な試行錯誤などをFacebook上で公開□

 市川氏とFacebook上で出会ったのは約4年前のことだ。BIMソフト「Revit」を用いた多方面にわたる実証実験などの結果を公開していた。
 直近でも「複合壁の面積集計にあたっての考察:入札見積集計時の階高(躯体)壁と仕上げ壁との『複合壁』に対するRevitによる自動集計について」「プロジェクトファイル作成時に重要な『プロジェクトブラウザ』の構成と『プロジェクトテンプレート』の設定」などBIMソフトの実利運用に直結するノウハウを公開している。市川氏へのリアルでのインタビューが実現したのは1月中旬のことだった。

 □大川小学校のモデル作成により、思いがこもる失われた建物の再現にBIMが有効なのを実証□

 Facebook上での公開事例の中で深く記憶に残っているのが東日本大震災で生徒、先生合わせて84人の尊い命が津波の犠牲になった大川小学校だ。市川氏は大川小学校を巡るさまざまな意見などに触れ、何人かの遺族とFacebookで交流する中で、大川小学校を再現したいとの強い思いからBIMソフトで再現作業に着手した。
 建築図面などの資料が少なく、再現作業は困難を極めた。航空写真などで細部を確認するため当時、赴任していたいわき市から石巻市まで足を運び、現地調査も行っている。個人としてボランティアで行ったものだから完成まで1年を要したが、思いがこもる失われた建物の再現にもBIMが有効なのが実証された。

 □復興工事のための被災地自治体への派遣を機会にセカンドキャリアとしてBIM導入に挑戦□

 東京都庁で2001年3月まで市街地再開発事業などを担当していた市川氏は、その後、民間企業などで建築の施工管理や施工図などの仕事に従事していたが、東日本大震災後の復興工事が進む中、職員不足を解消するため被災地自治体に派遣された。環境が変わったのを機会にセカンドキャリアとしても新しいことにチャレンジしたいと考え、導入したのがBIMソフト「Revit」などだ。
 市川氏が担当したのは災害公営住宅の工事監理で14年10月に竣工した。工事概要は集合住宅、一戸建て住宅、集会所などの複合棟による総合設計計画で、工事監理に先立つ企画段階でBIMによるモデル作成を行った。その後、工事監理を通じて住民サービス向上策の立案、当該地域でのエネルギー解析、施工計画の検討などへとBIMを援用していく。
 「個人としてBIMソフトは高額だったが災害復興に貢献したいとの思いもあり導入に踏み切った。BIMソフトがなかったならば大量な実務をこなせなかった。結果として退官後の起業に結びつくことになった」(市川氏)。
 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)

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