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東日本大震災から8年/JICAエッセイコンテスト/最優秀に福島高専・齋藤真緒さん  [2019年3月11日10面]

「地元の復興街づくりに関わり続けたい」と将来の抱負を語る齋藤さん=2月23日のJICAエッセイコンテスト表彰式で

廃炉事業の早期完了が地域の復興には欠かせない(1月30日代表撮影)

 ◇「行動して、現状を知る」大切さ学ぶ
 国際協力機構(JICA)が開いた「エッセイコンテスト2018」の高校生の部で、福島工業高等専門学校3年の齋藤真緒さんの作品「行動して、現状を知る」が最優秀賞に輝いた。福島県大熊町出身の齋藤さんは小学4年生の時、東日本大震災と福島第1原発事故を経験した。多くの人たちの支援を受け、元気づけられた体験から、ボランティア活動などに積極的に参加。活動を通じて自ら現地に赴き、現実を知る大切さを学んだという。
 東日本大震災の時に助けてもらったボランティアの方々のように、災害で悲しい思いをしている人たちを元気づけたい-。
 2015年のネパール大震災を知った齋藤さんは、現地で被災した人たちに何かをしてあげたいと考え、ボランティア留学を決意した。高専2年の夏休みを利用してネパールを訪れ、現地の学校の壁に得意の絵を描いた。当時を振り返り「その絵を見るために多くの子供たちが教室に入ってきて、喜んでくれた姿を見た時、絵が持つパワーの強さを肌で感じた」と話す。
 今回書いたエッセーで、齋藤さんは「世界の幸せのために私たちにできることは行動すること」といったメッセージを強く発信している。ネパールの現地スタッフから聞いた復興状況の話で衝撃を受けたのは、日本から送った支援金のたった数%程度しか国民に行き届いていないという現実だった。
 テレビや新聞などで知った情報だけで地域の状況を判断し、支援金・物資を送った行為で被災地や被災者の役に立ったと思うのは浅はかだと気付いた。実際にネパールへ行って自分の目で見て、耳で聞いたからこそ現実を知ることができた。
 帰国後、より良い支援・復興に関心を持つようになった。ある講演会で企業関係者が災害国に支援物資として米を送ったが、現地では災害で調理器具など生活に必要なものがすべて無くなり、米を炊くことができなかった事例を話していた。支援する側の自己満足ではなく、被災地のための支援に向けて「私たちは現地の人たちの声を聞かなくてはいけない」という言葉に共感したという。
 大熊町内にある齋藤さんの実家は帰還困難区域にある。帰宅できる日が来ても地元に戻ってくる人たちは少ないと予想されている。原発周辺地域の復興には課題も多いが、震災後に経験してきたことを踏まえ、地元の街づくりに携わりたいとの思いは、一層強くなった。
 現在、地元の建物に絵を描くボランティアができないかと大熊町役場の関係者に相談している。絵の持つパワーで地元を元気づけたいという思いからの提案だが、この活動で多くの住民が戻ってくるかは分からない。それでも行動することで、次に進むための何かが見えてくると齋藤さんは信じている。
 福島県の大熊町と双葉町にまたがる東京電力福島第1原子力発電所。原発構内では東日本大震災時の津波の影響で炉心溶融(メルトダウン)を起こした原子炉1~3号機の核燃料取り出しや溶け落ちた核燃料(デブリ)の除去を目指し、30~40年の作業期間を要する廃炉事業が進む。
 原発周辺地域の復興には廃炉事業の終結が不可欠。東京電力ホールディングスの小野明福島第一廃炉推進カンパニー・プレジデントは「原発事故から8年がたち、今も避難生活を送っている多くの方々にご心配、ご迷惑を掛けている。廃炉を進めることが福島の復興には必須であり、安全に責任を持って廃炉事業を全うしたい」と話す。

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