BIMのその先を目指して

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BIMのその先を目指して・91/樋口一希/設計者の活動領域を拡張するBIM・下  [2019年3月28日]

入札用見積もり積算数量集計(画面例)

 BIMにより起業した市川明氏(BIMデザイン顧問)の現況を通して小規模(個人)組織でのBIMビジネスの可能性を探る。

 □ファミリ作成に求められる部品の構造への知見とプログラマブルに再構成するノウハウ□

 昨年12月だが市川氏はあるハウスメーカー向けのBIMソフト「Revit」のシステム収納家具ファミリ作成に参加した。
 ファミリとは、「Revit」で駆動する部品のことで、パラメーター(寸法、ラベル、表示・非表示切り替えなど)を操作することで、大本のひな型からパラメーターの異なる複数のタイプの部品を量産できる。あらかじめ異なる種類(バラメータ)の部品を作っておく必要がないのでBIMモデル構築の工数を減らせるのがメリットだ。
   一方で、ファミリ作成には建築物を構成する部品がどのような構造(要素)を持つのかという知見と、その構造をプログラマブルに再構成(開発)するノウハウが求められる。
 市川氏はシステム収納の2次元PDF図面を基に〔幅〕〔高さ〕などをパラメーターとして抽出して、それに対応する〔幅〕〔高さ〕などを自在に設定できる壁面収納、デスク用つり戸棚など58モデルのファミリを短期間で完成させた。

 □BIMモデルからの施工図・平面詳細図レベルの図面の自動作成におけるBIMの優位性確認□

 「Revit」による施工図としての「平面詳細図」作成を通じて2次元CAD「AutoCAD」との相違点も感得した。
 壁で例示すると、2次元CADでは〔線〕〔レイヤ〕で規定して壁が表現され、通り芯や仕上げ線もそれぞれが独立して存在している。そのため壁の種類変更などが生じるとそれぞれの線の位置を修正しなければならない。一方、BIMでは、通り芯、仕上げ線、壁幅なども集合体(オブジェクト)として設定されているため、壁の位置や種類変更に際しても集合体としての壁を変更するだけで2次元での線表現も一括変更できる。ここでも平面詳細図レベルの自動作成におけるBIMの優位性を確認している。

 □本来的にBIMは建築にまつわるノウハウを習得したベテランの技術者たちこそが使うべき□

 直近の2月1日にあったのが地元の建設会社からの保育園新築工事での入札用見積もり積算数量集計の依頼だった。集計対象は北棟、調理棟、管理棟、南棟の4棟で延べ床面積も約1400平方メートルに及んだ。工期は6日間だった。市川氏はBIMの優位点であるI:Information=情報の集計機能を用いて依頼を完遂した。
 見積もり用PDF図面から必要な図面をAutoCADのPDF変換機能を用いてDWG(AutoCAD固有のファイル形式)に変換、BIMではDWGデータを基に見積もり数量算出用のBIMモデルを作成した。続いてBIMモデルから積算に必須な壁、床、天井などの面積を集計して表計算プログラムのExcelデータに変換、最終的に積算数量集計として完遂した。
 留意したのは、階高まで伸びる区画形成壁としての〔階高壁〕と天井止まりの〔仕上げ壁〕との壁種を設定し、〔階高壁〕と〔仕上げ壁〕との複合壁を作成した点だ。複合壁とすることでどちらの壁もドア、窓などの開口部を控除することができ〔階高壁〕と〔仕上げ壁〕との面積をそれぞれ自動的に集計することができた。床、天井の集計については通常の設定で集計して納品した。
 数量集計結果の納品時に依頼元の建設会社の経営者、事務職、工事担当者にBIMを実際に稼働させて作業報告する機会があった。ここまでの作業が6日間で可能だったのかという驚きとともに、I:Information=情報を活用したBIMの優位性も実感してもらえた。リタイア後の第三のキャリアでもBIMで起業して十二分に闘える。本来的には建築にまつわるノウハウを習得したベテランこそがBIMを使うべきなのだから。
 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)

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