BIMのその先を目指して

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BIMのその先を目指して・92/樋口一希/前田建設のBIM運用・上  [2019年4月4日]

住田町役場外観

大槌町文化交流センター3階図書館

 BIMを大規模木造建築に援用する革新的な試みを続けている前田建設。現在での集大成ともいえる新設の技術研究所「ICI(Incubation Cultivation Innovation)ラボ」(茨城県取手市)を訪ねて、優れた「BIMと木」の親和性の高さを中心にデジタル・ファブリケーションの地平を探った。

 □BIMデータ連携により木造新生産システムを可能にするロボット加工機開発を主題として□

 2月19日に日本建築学会で開催された「BIMの日 2019シンポジウム『BIMによってなくなるもの・うまれるもの』」。前田建設の綱川隆司氏(建築事業本部ソリューション推進設計部BIMマネージメントセンターセンター長)は、本稿テーマのBIMデータ連携により木造新生産システムを可能にするロボット加工機の開発などの詳細を明らかにした。
 BIMを援用した木造建築物として最初に手がけたのが第57回BCS賞を受賞した「住田町役場」(岩手県)だ。地域の主要産業が林業であることから主要な構造を木造とする条件とともに、町長からは「庁舎を住田町のショールームとしたいので天井はなくして木造の架構をありのまま見せたい」との意向も表明されていた。BIMソフト「ARCHICAD」を用いて約22メートルの大スパンによる無柱空間、レンズ型の大型トラス、内部を透視できるラチス耐力壁を用いたユニークな木造の架構を実現している。
 図書館、ホール、展示室からなる「大槌町文化交流センター おしゃっち」(岩手県)にもBIMが援用されており、連続する門型アーチと樹状の方杖架構による大スパンの特徴的な空間を実現している。「桐朋学園仙川新キャンパス」(東京都)では、都市型耐火木造建築とするための耐火仕様の構成などについて関係各所と協議する際、BIMによる詳細な収まりの見える化などで効果があった。

 □「BIMと木」の親和性についての深い考察に基づき木材の自由度の高さと構造強度を並立□

 前田建設がBIMによる木造建築技術を深化させる取り組みを進めている底流には、CSV-SS(※)の理念に基づき国内の林業再生と環境負荷低減に寄与するとの強い意志がある。
 2018年3月6日には住宅密集地での大規模火災の防止や木材の活用による循環型社会の形成を目指して「建築基準法の一部を改正する法律案」が閣議決定されている。木造建築に関する基準の大幅な見直しによって建築材料としての木材の一層の活用が広がることが見込まれている。
 「BIMと木」の親和性について考察すれば、木造はRC造や鉄骨造に比べて形態的な自由度が高く、デザイン的にもさまざまなチャレンジができる構造だし、構造体がそのまま仕上げになるメリットもある。
 ※CSV-SS(Creating Satisfactory Value Shared by Stakeholders)=前田版CSVでは一般的なCSV(共有価値の創造)の概念に加え、建設業の事業基盤に関わる「担い手不足」「労働力減少や高齢化」といった社会課題も含めて事業プロセスを改善しながら解決する。
 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)

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