BIMのその先を目指して

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BIMのその先を目指して・93/樋口一希/前田建設のBIM運用・中  [2019年4月11日]

ネスト棟のBIMによる架構モデル

ネスト棟の構造材の加工

 前田建設がBIMデータ連携で稼働する大規模木造用ロボット加工機により実現した木造新生産システムの詳細を報告する。

 □設計のBIMデータを木軸加工段階までダイレクトに連携させて大規模木造建築に使用する□

 千葉大学大学院工学研究院平沢研究室と協働でBIMデータを援用する革新的な木造新生産システムの研究開発を行っている前田建設。BIMの建物3次元モデルから大規模木造建築で使用する構造材を高精度、高自由度でダイレクトに自動加工するロボット加工機を開発した。
 大規模木造建築の構造材の加工には専用機が必要で、3次元データも専用規格で運用される。開発したロボット加工機は、汎用性に優れるファナック製の産業用多関節ロボット2基+搬送台で構成されており、小面積での設置・稼働が可能で、全方位からの自由度の高い切削・加工などを同時並行的に行う。BIMソフト「ARCHICAD」などの3次元データを利用、設計データを木軸加工段階までダイレクトに連携させ、大規模木造建築に使用する構造材を自動加工できるため、納期・工期の短縮と省力化による生産性向上が実現する。

 □研究所ネスト棟の梁・柱部材の加工に用いて従来機を凌駕する加工精度とスピードを確認□

 千葉大学に設置されたロボット加工機は新設の技術研究所「ICI(Incubation Cultivation Innovation)ラボ」(取手市)のネスト棟建設で実験的に援用された。写真1「ネスト棟のBIMによる架構モデル」にあるように、約800平方メートルの木造平屋のネスト棟で実際に使用した梁・柱部材の加工を行い、従来の加工誤差1・5ミリを0・5ミリまで減少させる高い加工精度と従来機を凌駕(りょうが)する加工スピードを確認した。「ICIラボ」竣工後にガレージ1(総合実験棟)に設置された第2世代機は、最大幅3メートルのCLT材(※)が加工できる仕様に拡張され、2019年にはプレカット工場への複数台導入による一層の生産性向上をもくろんでいる。

 □設計データを製造現場にまで拡張するデジタル・ファブリケーションへの実質的な転換□

 写真2「ネスト棟の構造材の加工」にあるように、ロボット加工機は自律的に個別稼働し、カッター+ドリルが装着している先端部分も異なる用途に対応して付け替えが利く。将来的には大量のロボットが稼働する自動車製造ラインに相当するように、複数台のロボットがネットワーク運用され、木材加工の製造ラインが実現する可能性を潜在させている。
 海外ではCLTを使った高層建築の事例が数多く報じられ、国内でも大規模木造住宅への可能性を広げるべく法改正が行われるなどCLTの利用は急速な伸びが期待できる。今回の試みは、ロボット加工機の開発・運用によって「BIMと木」の優れた親和性を感得する中で、建設業としての様態を工程最上流の設計データ(デジタル)から最下流の製造現場(リアル)にまで拡張するデジタル・ファブリケーションへの実質的な転換となっている。
 ※CLT(Cross Laminated Timber)=ひき板(ラミナ)を並べた後、繊維方向が直交するように積層接着した木質系材料。厚みのある大きな板が製作でき、建築の構造材として使用される。
 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)

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