BIMのその先を目指して

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BIMのその先を目指して・98/樋口一希/竹中工務店のビヨンドBIM・中  [2019年6月6日]

チェーンソーによる木製継ぎ手製作のワークショップ風景

 竹中工務店が2018年に新設したコンピュテーショナルデザイングループの現在に至る1年余りの濃密な歩みを追跡する。

 □重要なのは研究に偏らせず実際の現業プロジェクトに関わる中で新たな技術を探求すること□

 コンピュテーショナルデザイングループでは「私たち自身はどういうグループを目指すのか」という議論を重ね、「建築デザインの将来創造型コンピュテーショナルデザイナー集団である」と自己規定した。加えて重要なのは実際の現業プロジェクトに関わる中で新たな技術を探求するとしたことだ。
 それを受けて「私たちの現在地」を確認することを目的にして〔調査〕活動を開始した。17に及ぶ海外のコンピュテーショナルデザインに関するカンファレンスや学会などのイベントなどを厳選し、グループメンバーで10のイベントに参加、五つのイベントをWeb調査、二つのイベントには社内の他メンバーも加わり共に貴重な知見を得た。

 □EUではベンダーとのコラボ追求+大学とは産学提携を協議+米国でもカンファレンス参加□

 欧州連合(EU)では、ブダペストでグラフィソフトのKCC2018(GRAPHISOFT KEY CLIENT CONFERENCE)、ロンドンでオートデスクのAUTODESK UNIVERCITYに参加し、コラボレーションの可能性を検討するなどネットワークを広げ、その後も情報交換を継続している。シュツットガルトではICD(Institute for Computational Design and Construction)、チューリヒではETH Zurich(Eidgenossische Technische Hochschule Zurich)の2大学を訪問し、直近の取り組みについて意見交換し、産学連携への協議も行った。
 米国では、ニューヨークでAdvancing Computational Building Designというカンファレンスに参加、企業内におけるコンピュテーショナルデザインを推進する体制などについても積極的に議論がなされた。ここには米国を中心とした代表的な組織設計事務所であるSOM(Skidmore,Owings & Merrill)、KPF(Kohn Pedersen Fox Associates)、Gensler(M.Arthur Gensler Jr.& Associates,Inc.)などが参加していた。
 ニューヨークでのカンファレンスで特筆できるのは「Architecture 2030 Challenge」への課題が議論されたことだ。グローバルな気候変動の影響が増大する中、化石燃料への依存度を下げ、30年までに建築物、開発行為、大型改修の全てをカーボンニュートラルにする枠組みを提供するもので、未来志向の設計事務所がその解決のために尽力すると表明している。

 □ワークショップで建築をロボティクスファブリケーションにより革新しようとの熱意を実感□

 コンピュテーショナルデザインの重要な要点の一つである〔ロボティクス〕に関しては、チューリヒで開催されたROB-ARCH 2018(Robotic Fabrication in Architecture,art,and Design)に参加した。このコミュニティーは、建築分野におけるロボティクス活用の最先端を志向しており、MIT(Massachusetts Institute of Technology)など世界のトップクラスの大学の研究者が参集している。会場は建築をロボティクスファブリケーションによって革新しようという熱意にあふれ、自らが未来を切り開いているとの高揚感に包まれていた。
 ロボティクスを体現するChainsawed Wood Joinery(チェーンソーによる木製継ぎ手製作)というワークショップにも参加した。木造継ぎ手では、標準化に基づく規格材による効率的な生産が求められ、不均質な非規格材は無価値とされたが、コンピュテーショナルデザインとロボティクスの発展により不規則性も設計に取り込み、生産効率への影響を極小化できるようになった。
 ワークショップでは、非規格の天然木材の形状特性を設計に生かし、チェーンソー付きのロボットアームで加工することで、産業廃棄物を減らし、サスティナブルな社会の実現へとつなげる可能性を模索した。
 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)

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