BIMのその先を目指して

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BIMのその先を目指して・103/樋口一希/横松建築設計事務所の成功事例・下  [2019年7月25日]

外観パース

断面図(画面)

 横松建築設計事務所の宇都宮本社と東京(足立区)の二拠点施策を支えるのがインターネットだ。ネットワーク機能を持ち、遠隔地間でもグループ設計が可能なBIMソフト「ARCHICAD」でバーチャルな空間上にリアルな設計組織を展開している。

 □ホームページの3次元パースがきっかけとなり中国からの問い合わせが受注に結びつく□

 ホームページ(HP)を充実して意識的に自社メディア化することで、受注案件の半数がHPから、半数はリピーターと紹介となる中で、思いもかけず中国から問い合わせが入った。「最初は半信半疑だった」(横松邦明・横松建築設計事務所専務)から始まった案件も実施設計を終え、確認申請段階へと至っている。
 クライアントの関係者が在京していたので早速、面談すると、HPに掲載していた3次元パースに興味を持っての連絡であった。関係者が日本語も堪能であるなど幸運もあったが、間髪をいれず「500人規模の幼稚園を計画している」「建設地は西寧市だ」と設計条件も明らかにされた。西寧市は青海省の省都で、重要な政府施設が数多く置かれ富裕層も多い。教育熱心な富裕層が求める保育施設がほとんどないため、クライアントはデベロッパーとしてビジネスチャンスを見いだしていた。
 「名称は徽音国際森林幼児園」「関連法規など設置基準などは中国仕様」「外部からの侵入防止のセキュリティーは最高度に確保し内部では閉塞(へいそく)感を感じないように」と要求も具体化していった。外部へは完全に閉じ、内部は開放的との条件を満たし、森林幼児園のイメージを尊重するために、メビウスの輪のように8の字の建物を立体交差させて1階から2階まで中庭を介して回遊できるデザインを提案した。

 □BIMによる圧倒的な見える化効果と要望実現のスピード感でクライアントの信頼勝ち取る□

 8の字の建物を立体交差させる奇抜なアイデアだったがクライアントは関心を示したので、現地協力事務所の支援を仰ぎ、法規面などの整合をとり、打ち合わせを重ねて最終的には楕円(だえん)形の8の字に収斂(しゅうれん)させていった。図にあるように、2次元図面では設計も作図も困難を伴う。8の字のデザイン案も優れて自由度の高いモデリング能力を持つBIMならでは可能となった。
 杞憂(きゆう)であった言葉の問題もクライアント側が通訳を務め、支援してくれたし、話題のポケット翻訳機も威力を発揮した。それにより意匠設計は横松建築設計事務所が専任で担当し、現地の建築法規を熟知した建築設計事務所が構造設計、電気・設備設計、建築確認申請を担当する協働体制を確立していった。実施設計レベルの詳細な建物3次元モデルもインターネットでやりとりしながら協働を進めていった。
 超高層建物を手掛けるような現地の強力な競合相手も現れたが、BIMによる圧倒的な見える化効果と要望実現のスピード感で勝ち抜いていった。クライアントとは今後の案件についても協議しており、他社からの問い合わせも続いている。存亡の危機に陥っていた地方の小規模設計事務所が首都圏への進出を経て、海外にまで商圏を広げている。インターネットとBIMによる設計のデジタル化を積極的に進めた成果である。
 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)

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