BIMのその先を目指して

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BIMのその先を目指して・106/樋口一希/「鹿島統合報告書2019」を読み解く  [2019年8月29日]

「鹿島統合報告書2019」表紙

 建築BIM推進会議が日単位の活動報告を公表するなど官の側のBIMを巡る一連の動きが急なのは報告した。民間でも、先駆的な個人やグループなどがBIM運用を先導してきたが、ここにきて企業組織全体で建設業のデジタル化戦略を進めるとの強い意向表明があった。鹿島が8月7日に公表した「鹿島統合報告書2019」を読み解く。

 □報告書から透かし絵のように浮かび上がってくる先駆者たちの努力・挑戦や試行錯誤□

 鹿島の施工分野での先進的なBIM運用と、それを基に、我が国初のBIMサービス・プロバイダーとして誕生したGlobal BIM社の活動の実際を追跡してきた。それら直近の状況と今回の「鹿島統合報告書2019」を読み解くと、鹿島のデジタル戦略を追跡してきた者として隔世の感がある。
 建設業のデジタル運用について鹿島に最初に接触したのは1980年代初頭の「建築とコンピュータ」誌でのアンケートであった。著名な建築家や経営者に対して建築分野でのデジタル運用について意見を聞いたが、経営トップはその可能性について強い期待を示していた。実務面でのデジタル運用についての調査は90年代に入り日経アーキテクチュア誌のCAD連載執筆時にさかのぼる。かつて赤坂の鹿島KIビル1階の過半を占めていたVIC(Visual Information Center)の訪問記であった。
 現在であれば、大量の写真から3次元建物モデルを復元、Google EarthとBIMの3次元建物モデルを組み合わせて街区のシミュレーションなどが容易に可能だが、当時、それらが困難を極める中でVICが考案したユニークな手法が思い出される。青山通りに面した建物をスタイルフォームで概略、再現し、表面には映画セットのようにフォトショップで加工した2次元のファサードを貼り付ける。そこをモーション・コントロール・カメラで動的に記録すると、CGに匹敵する表現となるわけだ。街を歩く人々はカッティング・プロッタで切り出して一人一人自立させて撮影もしていた。「鹿島統合報告書2019」を読み解くと、そこに至る数多くの試行錯誤と先人たちの努力が透かし絵のように浮かび上がってくる。

 □経営トップが建設業の根幹をなす生産拠点でのデジタル運用「BIM活用強化」を内外に明示□

 「鹿島統合報告書2019」で最初に目に飛び込んでくるのは「社長メッセージ」コーナーだ。代表取締役社長の押味至一氏は、「中核事業の更なる強化とグループ収益力の拡大」というゼネコンの根幹をなすテーマにおいて、「BIM・CIMの技術を基軸に建設事業と開発事業、国内関係会社、海外関係会社が連携」と述べている。
 BIMがより明示的に登場するのは、代表取締役副社長執行役員建築管理本部長の小泉博義氏が今後の事業戦略のあり方について述べた「ICTによる生産性向上」だ。Global BIM社誕生への過程で報告した「BIMデータとAIの融合」「資機材管理へのBIM活用」「施工段階によるBIM活用強化」などが明記されており、「BIM技能の認定制度」への言及もある。
 将来を見据えたデジタル化戦略については、「中期経営計画におけるR&Dの戦略」で明確に表明している。建設業の根幹をなす生産拠点=施工現場での「生産性の飛躍的向上・人と機械の協働」の箇所では、すでに一部実用化も進めている「機械・ロボット・ICT活用による省人化・自動化」「BIM・CIM活用による技術開発推進」が列記されている。そしてGlobal BIM社は「主要グループ会社」コーナーに登場している。
 BIM推進の応援団を自認する筆者の立場からすると、表題は「統合報告書」とあるが、19年以降の近未来へのデジタル戦略の指針を社内外に表明したものと思える。それほどまでに要諦をなす部分においてBIMが散りばめられているからだ。今後とも鹿島本体はもとより、Global BIM社の解体新書ともいうべき調査、研究を行い、継続的な追跡を行っていく。
 ※「鹿島統合報告書2019」(https://www.kajima.co.jp/csr/report/index-j.html)
 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)

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