BIMのその先を目指して

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BIMのその先を目指して・110/樋口一希/日事連の会員BIM活用実態調査結果  [2019年10月3日]

Q:国や自治体からどのような支援があると良いか

 日本建築士事務所協会連合会(日事連)は、3月20日から5月17日にかけて会員事務所を対象に行った「建築士事務所のBIMとIT活用実態にかかわる調査」の結果を公開した。

 □建築士事務所全体としてはBIMの普及は進んでいないとの厳しい現状認識を踏まえて実施□

 調査に際しては「開設者あるいは管理建築士が現状をどう捉えているかを把握するとともに、すでにBIMを活用している建築士事務所が何を利点と捉えて運用し、何を阻害要因と認識しているかを把握する調査を実施することによって、今後の建築業界におけるBIMの普及・促進に向けた支援活動に活かすための資料とすることを目的とする」としている。
 回答者総数は955、事務所形態の内訳は総合設計事務所38・7%、専門設計事務所32・9%、施工会社設計部(工務店含む)28・4%となっている。

 □導入済みは全体で3割だが導入予定は6%と今後のBIM普及のために抜本的な対策が必須□

 「BIM導入状況について」では、全体でのBIM導入の割合は「導入済みで活用中」(17・1%)と「導入済みだが未活用」(12・9%)を合わせて30・0%となっており、事務所形態の内訳では総合設計事務所でのBIM導入済みの割合が最も高くなっている。
 BIM普及への具体的な施策を講じるべきだと危惧するのは、全体で「導入予定なし・未定」(25・6%)、「導入していないが興味がある」(37・7%)と比較して、「導入予定」が5・9%とあまりにも少ないことだ。
 そのような状況下、BIM導入を推進するためのヒントとなるのが「お客様の要望」「体験版で作成した画像でお客様の反応が良かったから」にあるように、発注者の声や反応を見て導入したという回答だった。発注者に期待するとは一見すると他力本願的だが、BIMは究極、「発注者のためのもの」という本質からすると至極当然である。

 □発注者へのBIMによる見える化効果は顕著、明らかになった設計実務に直結する運用効果□

 「BIMを導入・適用したことによる効果」については、全体で「効果があった」(56・9%)、「効果は実感しているが具体的にはわからない」(31・3%)と高比率で、「効果があった」との回答でも「設計段階でのお施主様の完成イメージ度が格段に上がった」「仕事につながりやすくなった」「プレゼン力が上がった」と発注者を意識したものが顕著であった。
 設計組織に直結する導入効果としては、「一つ修正すれば建物図全てに連動するので修正し忘れのミスが減少する」「作図の大幅な時間短縮が図ることができる」に見られるように、修正対応のスピードの速さにより所員の負担軽減につながったとの具体的な回答が見られた。加えて「若手はBIMの経験、ベテランは建築の知識があり、若手とベテランのマッチングで効率的な働き方が可能」との前向きな回答も見られた。「効果は実感しているが具体的にはわからない」の内実では「数値的な効果が見えない」にあるように、効果を測定できないもどかしさが垣間見られる。これは2次元CAD普及期に、定量的な効果測定が困難だった状況と近似している。

 □BIM普及のより一層の加速が喫緊の課題の中で求められる公的支援とベンダーの価格政策□

 今後のBIM導入に向けた取り組みについては、国や自治体からの「導入や教育に対する補助金の支給」が64・4%で最も高く、BIMソフト導入時の負担が重くのしかかるなど切実な現状も吐露された。
 米国事情に詳しいBIMコンサルから米国の設計事務所の所員1人あたりの年間のICT投資が約1万ドルなのに、わが国では約3千ドルだと聞いたことがある。これでは高額高止まりのBIMソフトは購入できない。待ったなしのBIM普及が求められる中、公的な支援はもちろんのこと、BIMソフトベンダー側にも革新的な価格政策が求められている。
 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)

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