台風19号-建設コンサルの挑戦・中/人材不足が復旧業務の足かせに

2019年12月4日 トップニュース

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 地球温暖化の影響もありほぼ1年間隔で発生している豪雨災害。被害規模は年を追うごとに大きくなっている。災害が起こるたびに建設コンサルタント各社は応急復旧のための緊急対応に始まり、本復旧に向けた調査や計画立案、設計などの業務に対応してきた。大規模な自然災害が相次ぎ発生したこともあり、今秋の台風や豪雨災害では過去に発生した災害対応が完了しないまま新たな対応が必要になり、人材の不足という課題が色濃く表れる事態が起こっている。
 中国・四国地域で被害が拡大した2018年7月豪雨で対応に当たった建コン各社。過去の大災害が完全に終息しないまま、台風19号が発生した。各社が共通して目指すべき姿は、限られた人員をいかに適正配置しながら災害対応に臨むかという点だ。
 オリエンタルコンサルタンツホールディングスは、11月に発表した19年9月期決算で連結売上高のうち防災関連業務として計約100億円を計上した。その多くが過去の豪雨で被害を受けたエリアの復旧業務や河川や道路などの防災対策業務という。同社の財務担当者は「これだけ立て続けに災害が発生すると人材確保が難しい」と悲鳴を上げる。
 「通常業務と並行して災害対応に当たってきたが、技術者不足がピークを迎えている」。日本工営は苦渋の決断として災害対応を断るケースもあるとし、現時点で18年7月豪雨や北海道胆振東部地震と同じような状況に陥っているという。
 災害対応が落ち着いた段階で、社員に振り替え休日を付与するという長大は「(一時中止によって)本来1月だった納期が3月にずれ込む可能性が出てきた」と危機感を募らせる。この状況が続いた場合、時間外労働の上限規制を受ける各社の中から「法令違反も出るのでは」と先行きを危惧する。
 「次年度の発注業務をこなせるか心配だ」と見るのはオリコンサル。他の拠点に比べ、東北エリアの人材が不足気味という同社は災害関連の設計業務の履行期限が不透明な中で、いかに適正に技術者を投入できるかが課題とした。パシフィックコンサルタンツは「来年度に発注される通常業務に対し、当社が受注を制限するわけには行かない。災害対応業務との重複もしかねない」と不安をにじませる。
 災害査定が大詰めを迎え、年明けからは復旧工事に関連した設計業務が本格的に発注される。各社からは社会的な責任を果たすために対応の必要性を感じながら、20年度の受注活動に影響を及ぼしかねないと苦慮している。