工事・計画

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建築家・山本理顕氏/横浜市にカジノのない街づくり提案/住職一体の生活空間整備  [2020年7月27日1面]

空から見た山下ふ頭のイメージ。高層ビルはない

かつての町家を想起させる両側町

 横浜市が中区の山下ふ頭に誘致を計画しているカジノを含むIR(統合型リゾート)施設整備を巡り、横浜市在住の建築家で名古屋造形大学学長の山本理顕氏が、カジノを含まない住職一体の街づくり構想を提案している。ふ頭に計画人口2万人規模の居住スペースの付いた店舗と約4000室の宿泊施設を建設。居住者が生活と仕事を営む「現代の町家」をコンセプトに、生活空間へ観光客が集まる街づくりを提案している。
 市が昨年10月に募集した「IR実現に向けたコンセプト提案(RFC)」に応募した。テーマは▽日本型IRの実現関連▽開発事業関連▽関連産業に関すること-の3項目。山本氏は建築家で法政大学教授の北山恒氏、大手ハウスメーカーらと共同で「開発事業関連」として提案した。
 提案によると山下ふ頭の敷地全体に高さ7メートルの人工地盤を築き、その上に街を造ることで高波・浸水被害に備える。人工地盤を支える柱は柱頭免震で地震対策を施す。人工地盤に4階建ての住職一体型施設を整備。低層にすることで全階が商業空間として利用可能になる。通りをはさんで相互に向かい合って建つ「両側町」とすることで、かつての「町家」のようなイメージを持たせた。
 屋上にはテラスや菜園などの緑地を設け、さらにその上部に4階建ての宿泊施設を配置する。海からの風の流れを妨げないよう配慮。ふ頭内に数本の水路を設けて水運に利用するとともに、横浜港内の水循環などにも配慮する。山下公園側に市が求めるMICE施設(4階建て延べ6万8000平方メートル規模)も整備する。
 住職一体の街づくりは将来的な住宅問題の解決策にもなる。計画人口の約半数は65歳以上の高齢者を想定。住居で家業を営み街の継続発展につなげる。外国人も積極的に受け入れ、各国の特色を生かした街路を整備し集客につなげる。人が住む街として、ふ頭内に小中一貫校3校や医療施設、集会所なども設ける。交通機能は埠頭入り口にバスターミナルを整備。ふ頭内にトラムを巡回させる。
 山本氏は「世界で人気がある観光地は、住民が築き上げた生活文化や触れ合いが魅力。イベントなど一過性のものではない」と指摘する。市はカジノがなければ開発事業の採算確保は困難との立場。山本氏らはインフラ整備を含む約3300億円の投資は、住宅やホテルの賃貸収入によって約19年で回収可能とみる。
 市が進めるIR構想に「短期的な効果はあるかも知れないが、失うものがあまりにも大きい」と警鐘を鳴らす山本氏。「山下ふ頭周辺には市民が培った豊かな歴史と都市環境が存在する。IRに固執せず異なる提案にも耳を傾けてほしい」と訴える。

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