すばるを救え-ハワイ観測所メインシャッター改修

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すばるを救え-ハワイ観測所メインシャッター改修・上/手書きの図面、少ない情報量  [2020年11月4日]

マウナ・ケア山頂に立つハワイ観測所。建物上部のメインシャッターが左右に開いて観測する。

 米ハワイ島のマウナ・ケア山山頂にあり、1999年から天体を観測し続ける日本の国立天文台ハワイ観測所(ハワイ州)は、過酷な立地環境から設備に不具合が目立ち始めた。天体観測の要となる口径8・2メートルの「すばる望遠鏡」があるのは円筒状のメインシャッター内。シャッターが途中で止まる回数が増え、望遠鏡の故障にもつながりかねない事態に陥っていた。重要設備の改修はどのように進められたのか-。道のりを追った。(敬称略)編集部・若松宏史

 「どの図面が正解なんだ」。2018年の春ごろ、横河システム建築(千葉県船橋市)で設計業務を手掛ける相馬孝吉は思わずつぶやいた。本社オフィスの机の上にはハワイ観測所にあるメインシャッターの設計図が広がる。目はせわしく机上の図面とパソコン画面を往復していた。

 改修工事に向け、シャッターを造った欧米メーカーが残した手書きの設計図をCAD化する作業。観測所が建設された1990年代はまだ手書きが主流だった。サイズが図面によって異なる上、所々欠けており、どれが正解なのか判断しにくくなっていた。改修には正確な図面が欠かせない。現地に行って確認する必要があった。

 きっかけは横河システム建築に届いた一通のメールだった。送信元はハワイ観測所。世界最大級の主鏡を持つ望遠鏡すばるを収めるメインシャッターに不具合が発生し、修理について相談したいという内容だった。メールを最初に見たのは特殊建築部の村岡真営業課長(当時)。「よく分からないな」というのが正直な感想だった。だが一方で心のどこかにひかれるものがあった。

 ハワイの観測所は富士山より高いマウナ・ケア山頂、標高4139メートルの場所にある。建物の高さは44メートル、円筒型で望遠鏡の動きに合わせ建物上部が回転する。メインシャッターは望遠鏡を覆うように配置。夜間観測する時、左右に開く仕組みだ。

 メールの送り主であるハワイ観測所の瀧浦晃基技術企画開発室長(当時)がメインシャッターに不具合を感じるようになったのは15年ごろ。観測所に着任して6年がたったころだった。目に見えて止まる回数が増えていた。開かないことよりも閉まらない方が問題だった。「雨や雪が降ったりすると、望遠鏡が水にさらされる。これが一番良くない」(瀧浦)。担当のエンジニアが夜中にたたき起こされて山頂まで急行することもあった。

 瀧浦は観測所全体のメンテナンスも担当。調査してみると修理が必要な案件が50件見つかった。メインシャッターの改修はそのうちの一つだった。基本方針は「内製化」。外部の業者にすべてを頼むのではなく、自分たちで修理業者を探していた。インターネットで「可動屋根」などをキーワードに検索を続け、横河システム建築にたどり着いた。

 改修の話が進む過程で瀧浦からメールで送られてきたメインシャッターの手書き図面は約50枚。相馬は「少ない方だと思った」と受け取った時のことを振り返る。設計一筋40年の相馬は手書きの図面で驚くことは無かったが、情報量の少なさに戸惑った。図面が欠けている箇所は経験を基にCADで再現。現物とどの程度異なっているかは現地で確認することにした。

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