すばるを救え-ハワイ観測所メインシャッター改修

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すばるを救え-ハワイ観測所メインシャッター改修・中/ガイドローラーに不具合  [2020年11月5日]

現地調査でメンテナンス箇所を一つ一つ確認した。

 2018年6月、横河システム建築の技術者である村岡真、相馬孝吉、中井洋平の3人はハワイに飛んだ。ハワイ観測所から事前に送ってもらったメインシャッターの設計図と実物がどの程度一致し、工事が可能かを判断したかった。村岡は全体の統括、相馬は設計、中井は施工を担当した。

 現場を見ると「図面と現物が違うところがかなりあった」(相馬)。修理が必要な箇所もいくつもあったが、予算や期間は限られている。最適な改修方法は何かを考えながら見て回った。欧米メーカーが製造したメインシャッターはこれまで本格的な改修をしてこなかった。村岡は「メンテナンスは非常に重要なはず。それをしてこなかったことに驚いたし、逆に良く動いていたなと思った」と振り返る。

 「(工事を)できなくはないが一筋縄ではいかなそうだ」と中井は不安を感じた。正確な設計図がない上、経験したことのない高い標高での作業。果たしてやり通すことができるのか、不安が頭をよぎった。実際初めて観測所に行った時に「最初は何事も無かったが、いろいろ話をしている時に急に頭がぼーっとなった」(中井)。観測所が立つ標高4200メートルの酸素濃度は山麓の3分の2程度。高山病のリスクと隣り合わせだった。

 観測所でメンテナンスを担当する技術企画開発室長(当時)の瀧浦晃基はメインシャッターが止まる原因をある程度推定できていた。自分の判断を裏付けるため専門家に見てもらいたかった。確定できれば改修方法や必要な費用などが見えてくる。

 調査の結果、シャッター下部に斜めに設置しているガイドローラーに不具合があることが判明。数カ月後に現地調査をもう一度行うとともに、修理方法の協議も進めた。最終的にはガイドローラーの交換と、厚さ2メートルあるメインシャッター内部へのアクセスに必要なはしごと足場の取り付け工事を行うことが決まった。

 工事がスタートしたのは19年6月。観測所には車でアクセスできるが、高山病のリスクを回避するため一気に山頂までは行けない。標高2800メートル付近にあるビジターセンターで30分ほど休憩し、体を高地順応させる決まりがあった。待機時間を含めると山頂まで片道2時間かかった。

 マウナ・ケア山頂は地上の天候に影響されない高さにあり、快晴の日が多く湿度も極端に低い。気温は1年を通して0~10度しかなく防寒着が必須だった。空気が薄いため作業員は酸素ボンベを携帯し、酸素を放出するチューブを鼻の下に取り付けた。山頂での作業時間は1日7~8時間。9月には観測しなければならない天体があるため工期厳守が絶対だった。

 思わぬトラブルもありメイン工事である新ガイドローラー取り付けは工事開始から2カ月も後のことになる。どうやってやり遂げるのか-。標高4000メートルを超える現場での闘いは困難を極めた。(敬称略)

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