検証-国土強靱化政策

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検証-国土強靱化政策・中/緊急対策後、施工余力が焦点/業界団体は「問題ない」  [2020年11月18日]

 政府が「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」(2018~20年度)後の対策の在り方を描く上で、建設業者の施工余力が焦点となっている。財務省は労働力の確保が困難と指摘し、公共事業の積み増しに消極的な姿勢を見せる。ただ、建設現場を熟知する業界団体や国土交通省は「施工余力に問題はない」と異口同音に話す。新型コロナウイルスの影響で民間投資の落ち込みが顕在化する中、建設業界の労働力不足はどのような状況なのか-。建設投資額の推移などのデータを基にひもとく。

 財務省は10月19日の財政制度等審議会(財政審、財務相の諮問機関)財政制度分科会歳出改革部会で今後の社会資本整備の基本的な方向性を示した。その中で、建設業者の手持ち工事量の増加や建設業の有効求人倍率の高さといったデータを紹介。足元で建設労働需給が逼迫(ひっぱく)し、今後も労働力確保が難しいと指摘した。

 この見解に対し、建設業団体のトップらは「人手不足でできなかった現場、遅れた現場はない」(山内隆司日本建設業連合会会長)、「(災害復旧が集中している地域など例外を除き)全国的にはまだまだ実際の施工余力はある」(奥村太加典全国建設業協会会長)と反論する。

 施工余力があることを裏打ちするデータもある。国交省によると、建設投資額がピークの84兆円(1992年)から19年度時点で3・3割減少(公共は4割減少)しているのに対し、就業者数は2割減にとどまる。11年の東日本大震災以降の建設技能労働者数の過不足率(プラスが不足、マイナスが過剰)を見ても、3・9%をピーク(13年度)に、20年8月時点で0・7%まで落ち着いた。業界全体を俯瞰(ふかん)すれば、施工に必要な人材の確保は十分に可能と言える。

 「建設工事受注動態統計調査」などを基に算出した公共工事の手持ち工事高もここ数年安定して推移している。建設現場の生産性向上策「i-Construction」の推進や施工時期の平準化の取り組みなどを背景に施工効率も向上している。

 有効求人倍率の観点でも、建設業の入職経路のうち有効求人倍率を算出する基となる公共職業安定所(ハローワーク)での紹介は全体の約3割にとどまる。大半は縁故などそれ以外の経路が占めている。有効求人倍率には将来の受注増を見据えた募集なども含まれ、稼働中の現場の人材の実態と異なる場合もある。そのため、有効求人倍率を材料に建設業界全体の労働力不足を分析することはできない。

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