論説・コラム

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回転窓/使われてこそ価値をつなげる  [2021年1月18日1面]

 今からおよそ1世紀前の1908年、北海道函館市に建てられた「旧ロシア領事館」。函館の異国情緒あふれるレトロな街並みの中でも代表的な建造物の一つで、国内に唯一残る旧ロシア帝国時代の貴重な建築でもある▼赤いれんがと白いしっくいのモダンな外観に目を引かれた観光客も多かろう。64年に市の所有となり、宿泊研修施設「道南青年の家」として開放された。89年には市の景観形成指定建築物にも指定されている▼市民に惜しまれつつ96年に閉鎖。これ以降、活用方法を見いだそうと検討されてきたが、厳しい財政状況から結論に至らなかった。この間も老朽化は進み、補修や改修の費用が膨らんだ結果、市は街の大切な資産を民間に売却する道を選んだ▼市民や建築界からは価値喪失を危ぶむ声が上がり、保存活用に向けた要望活動が起こったものの、財政面も含め現実的な活用策は提出されなかった。市は景観形成指定建築物の維持を条件にプロポーザル方式で提案を募り、2月に売却先を決める方針だ▼建築は使われてこそ価値を継承していける。歴史的建造物を活用できる理解ある買い手を探し出してほしい。

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