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浮体式防波堤のニーズ高まる/養殖業の適地拡大で/研究会、自治体にPR強化  [2021年2月19日1面]

浮体式防波堤。全国で40件近くの採用実績がある

 海上で波から航路や養殖場などを守る浮体式の防波堤や消波堤のニーズが高まりつつある。外海と背後水域の海水交換を妨げず、陸から遠い場所に低コストで整備できるメリットがある。いけすなどを用いる養殖は波の静かな場所が必要で、これまでは内湾域を中心に行われてきた。養殖業の成長産業化に向け、沖合域での大規模な静穏水域の確保が検討される中、一度は頭打ちとなった浮体式の採用を積極的に働き掛ける動きが出ている。
 マリコンや造船会社らが会員の漁港漁場新技術研究会(橋本牧会長)。大水深海域でのコストや施工性などがネックとなる重力式防波堤の代替として浮体式防波堤を普及してきた。ロープとアンカーで浮体を係留する。四国や九州地区の内湾で採用が広がり、1980年代から2010年ころにかけ40件近い施工実績がある。数メートルから数十メートルの鋼製の箱型形状が多い。
 設置から20~30年が経過し、維持・更新ニーズが高まっていることから、同研究会は23年ぶりに設計・施工マニュアル案を改定した。浮体式防波堤専門部会が編集を手掛けた。同部会はエム・エムブリッジ(広島市西区、池浦正裕社長)と日立造船、三井住友建設鉄構エンジニアリング(千葉市美浜区、松田篤社長)の3社で構成する。
 マニュアルは、浮体の設置水深が10メートル以上、波消対象波の周期が9秒以下を適用範囲としている。研究会の関係者は「浮き防波堤の諸元を決定できる波消特性曲線を公開したのが大きい」と改定のポイントを説明する。「自治体の職員や建設コンサルタントの担当者がどの程度の規模で、波の影響をどれくらい抑えられるか把握でき、採用を検討しやすくした」という。
 浮体式の防波堤や消波堤はしばらく採用が途絶えていたが、2019年にクロマグロの養殖拠点となる長崎県発注の「尾崎地区水産基盤整備工事」(長崎県対馬市)で採用された。効率的な水揚げ体制を構築するための浮桟橋の整備と港内静穏度の確保に向け沖防波堤を整備する。
 農林水産省は昨年7月、「養殖業成長産業化総合戦略」を策定。内湾養殖が手狭となる中、養殖適地を拡大するため、大規模静穏水域の確保に必要な事業を重点的に実施するとした。養殖場として漁港の有効活用も積極的に進める。陸から離れるほど、浮体式のコストメリットは大きくなる。
 同研究会は改定したマニュアルを都道府県の関係部局に配布するなど、PR活動に力を入れていく考えだ。

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