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トンネル工事を安全に-粉じんガイドライン改正・上/測定方法変更、解釈巡り業界困惑  [2021年3月30日1面]

 ◇建災防が換気技術指針見直し
 トンネル工事の粉じん対策を巡り、厚生労働省が改正した粉じん障害防止規則と「ずい道等建設工事における粉じん対策に関するガイドライン」が4月1日から段階的に施行される。切羽に近接する場所の粉じん濃度の測定方法が変更され、測定結果に応じた呼吸用保護具を使用しなければならなくなる。元請となるゼネコンや作業を担う専門工事会社からはガイドラインの解釈で困惑する声もある。改正内容を整理する。(編集部・粉じん対策取材班)
 トンネル工事の坑内で発生する細かい土砂などの粒子を吸い込むと、肺細胞を壊す進行性の病であるじん肺の原因となる。建設各社による現場環境の改善努力で、トンネル工事などに従事する作業者の職場健診で見つかったじん肺の新規患者数は、厚労省の調査で1981年の435人が2018年時点で15人に減った。
 じん肺は発症までに時間がかかり退職後に発症するケースも少なくない。粉じんはトンネル掘削時だけでなく、トンネル側面へのコンクリート吹き付け時や掘削した土砂を坑内でダンプに積み込む場合も発生する。大型設備を持ち込めない坑内でいかに効率的な粉じん対策をするかが、現場で課題の一つになっている。
 ガイドラインの改正では、簡便で負担の少ない正確な切羽付近の粉じん濃度測定・評価方法を検討し、適切な手法の選択肢を広げた。換気方法は効果的な換気を可能にする「吸引捕集方式」や、「局所集じん機」「エアカーテン」など新たな換気設備を導入するよう求めた。1立方メートル当たりの粉じん濃度の目標レベルは、現行の「3ミリグラム」を「2ミリグラム」に引き下げる。粉じん濃度の測定結果に応じて有効な電動ファン付き呼吸用保護具の使用を義務付ける。トンネル掘削などの作業主任者に課す職務も追加した。
 粉じん濃度の測定はこれまで、濃度が最も高くなる作業を対象に10分間継続してデータを取る方法だった。変更後は掘削からずり積み、コンクリート吹き付け、ロックボルト取り付けまで一連の作業に従事する全時間を対象にデータを取得し、測定値を平均して濃度を求める。
 建設業労働災害防止協会(建災防、今井雅則会長)は、実務上の手引として広く普及している「ずい道等建設工事における換気技術指針」を改定するため、委員会を昨年12月と今年2月に開催。見直し作業を急ピッチで進めてきた。
 1サイクル平均で2ミリグラムの目標を達成するための新たな算定方式を確立。例えば吹き付けコンクリート施工で拡散希釈方式の対策を講じた時、現行算定式で求める所要風量に1・2倍を掛けデータを利用する。4月に同指針の改定版を発行。5月以降トンネル換気設備の設計者らを対象に研修会を開く予定だ。
 《ずい道等建設工事における粉じん対策に関するガイドラインの主な改正点》
 △粉じん目標濃度レベルを現行の3mg/m3から2mg/m3に引き下げ
 △粉じん発生源に関する措置の強化
 ・設計段階に、より粉じん発生量の少ないトンネルボーリングマシン工法やシールド工法などの採用を検討
 ・コンクリート吹き付け作業で湿式型の吹き付け機械装置と同等の措置としてエアレス吹き付け技術を明示。粉体急結剤、液体急結剤の使用と分割練り混ぜの導入を図る。遠隔吹き付け技術の導入を検討
 △換気装置などによる換気の強化
 ・より効果的な換気方法である吸引捕集方式の導入を図る
 ・新たな換気設備として、局所集じん機、伸縮風管、エアカーテン、移動式隔壁などの導入を図る
 △呼吸用保護具の使用基準の強化
 ・粉じん濃度の測定結果に応じ、有効な電動ファン付き呼吸用保護具を使用
 △切羽に近接する場所の粉じん濃度等の測定を新設
 △ずい道等の掘削等作業主任者の職務の追加(22年4月1日から施行)
 ※粉じん濃度測定などを除き4月1日より前に契約した工事は改正前のガイドラインを適用
 (次回から2面に掲載)

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