デジタルで建設をDXする

このエントリーをはてなブックマークに追加 文字サイズ 

デジタルで建設をDXする・13/樋口一希/軸部材をBIM上で仮組みし復元図作成  [2021年4月22日]

仮組みされた軸部材3Dモデル(9カ所12部材)と3D復元設計モデルの重ね合わせ

 安藤ハザマとアールテック(※1)は、大正時代に建設された木造建築物の復元設計にデジタルスキャンデータを活用、軸組み部材の3次元モデルを使用してBIM上での仮組みを実施した。

 □軸部材の3次元モデルでは仮想空間上で仮組みができるため各部材高さの決定などが可能□

 木造の文化財や歴史的建造物は、ほとんどの場合、建物の経年変化による傾き、不陸、部材の腐朽等が存在している。それらの復元・保存修理では、解体時の建物調査結果から傾きや不陸を調整し、部材の高さなどを決定する。
 復元工事では、木材の腐朽部や損傷部の補修後に実部材を使用した「仮組み」を行うことが通例だが、柱の足元が腐っている場合には、最初に柱材の補修をした上で仮組みをしなければならないため仮組みまでに時間がかかっていた。
 そこで軸部材の3次元モデルを利用すれば柱材の補修をする前に仮想空間上で仮組みができるため、補修の範囲や各部材高さの決定などが可能となり、設計業務を効率的に進めることができるようになる。加えて、仮組みにより実部材の状況を的確に把握できれば、数量漏れや設計変更等が生じる可能性も少なくなり、発注者、設計者および施工者の業務負担軽減にもつながる。
 両社は文化財・歴史的建造物の復元修理で行う実際の作業を念頭に置き、木造の歴史的建造物の軸部材をスキャニングし、そのデジタルスキャンデータから作製した3次元モデルを使ってBIM上で組み立て、2次元設計図から起こした3次元復元設計モデルとの比較を行い、有効性について検討した。

 □復元ポイントによって創建時と解体時の比較など現実にはできない工程を仮想空間で想定□

 3次元モデルによる仮組みでは、スキャニングから得られるデータだけではBIM上での操作は困難となっている。また軸部材の3次元モデルには「柱」や「梁」などの物理特性情報(※2)がないため部材同士の干渉を自動でチェックすることができない。
 それらの課題を解決するため、アールテックが軸部材のスキャニングとモデリングを担当し、仮組みに必要な基準やハンドルポイントとなるデータを加えた3次元モデルを作製した。安藤ハザマは、3次元モデルを用いて文化財・歴史的建造物の施工技術を基に実際の軸部材の組み立てに必要な作業を応用しBIM上での仮組みを行った。
 接続部についてはCADの3次元断面機能を活用し、部材同士のねじれや干渉がないように微修正を繰り返した。具体的には、棟木の「腰掛け鎌継ぎ」の継ぎ手接合部における3次元断面機能を使った干渉チェック、柱と桁の仕口接合部の整合と最適化を実現した。
 柱と桁の仕口接合部の仮組みを終えた3次元モデルについては、3次元復元設計モデルに重ね合わせ復元図の妥当性を検証し、有効性を確認している。
 今回の手法を応用することによって、復元ポイントを創建時とした場合と、解体時とする場合の比較など現実にはできない工程を仮想空間で行えると想定している。今後は、設計・施工BIMへの展開・活用も視野に入れ、国内に多数存在する文化財・歴史的建造物の保存復元、伝統技術の継承に貢献していく。
 (※1)アールテック=製造分野や医療分野における情報システムの開発・販売・サポートと試作品の製作サービスなどを展開。製造分野では3次元モデリング技術に基づく試作品の製作サービスを行い、工業製品開発の合理化に寄与している。本社は浜松市中区。
 (※2)物理特性情報=体積や重量など物体としての情報。使用した軸部材3次元モデルは点・線・面のつながりでできた「境界」のデータであり、重量や体積がない。
 〈アーキネットジャパン事務局〉(毎週木曜日掲載)

この記事へコメント

メールアドレスが公開されることはありません。